最近よく耳にする、「推し活」。自分のイチオシを応援する行為ですが、趣味の範囲を超えた活動となってしまうと費用が嵩み、取り返しがつかないことにもなりかねません。本記事ではFP1級の川淵ゆかり氏が、妻が男性アイドルグループに憑りつかれたAさんの事例とともに、夫婦間の金銭トラブルについて解説します。
年収3,500万円の44歳美容外科医、再婚した「可愛い22歳年下妻」にカード、開業資金を使い込まれ…「実家を巻き込む大騒動」の末路【FP1級が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

趣味の範囲を超えてしまった推し活費用

アイドルのCDやDVDだけを買っているうちはまだ可愛いものですが、かけられるのであればいくらでもお金をかけられるのが「推し活・追っかけ」です。「推し活・追っかけ」にはどのくらいお金がかかるのか見てみましょう。

 

・CD・DVD 2,500円~1万円
※初回盤・限定盤など形態が違うものが販売されるとすべて購入する人もいる。さらに、保存用として同じものを2枚購入する人もいる。

・ファンクラブ会費 数千円

・コンサートチケット 数千円~1万円
※前列などいい席の場合は2万円を超えることもある。

・グッズ代(うちわ・タオル・Tシャツなど) 数百円~5,000円

・書籍代(雑誌・写真集) 数百円~3,000円

・交通費(高速バス・新幹線・飛行機など)

・宿泊費(ホテル代) 数千円~数万円

 

CDなども年に何枚かは出ますので、年に数回こういったお金がその都度かかってきます。1回に数千円といえども年間で計算するとけっこうな金額になりますね。

 

さらにCDを買うと握手券がもらえるアイドルのファンだと何十枚も買う人もいるそうで、これだといくらお金があっても足りません。アイドルに熱中するお子さんをお持ちの親御さんなどは、ちょっとチェックしたほうがよいのでは、と筆者も他人事ながら心配してしまいます。

 

そして一番の出費はやはり「遠征費用」です。離れた地方などで行われるコンサートにまで出向いていくファンもいます。Aさんの奥さんも、Aさんには内緒で好きなアイドルグループを日本中追いかけ回していたそうで、新幹線は当然自由席ではなくグリーン車。駅からはバスではなくタクシーも平気で使っていたようでファンのあいだでは「セレブなお姉さま」として有名だったようです。

 

そして、コンサートなどに出かけるときは必ずおしゃれをします。興味のない人からすれば「見てもらえるわけでもないだろ!」と突っ込まれそうですが、美容院はもちろん洋服やアクセサリーにバッグや靴、エステにまでお金をかけようと思えばいくらでもかけられる天井知らずとなってしまいます。

クレジットカードの請求金額に衝撃、開業資金まで使い込み…

「浮気をされるよりはまだいいか」と思っていたAさんですが、奥さんが遠征に出ていて不在だった際にポストに入っていたクレジットカード会社からの請求書の数を見て衝撃を受けます。クレジットカードは上限ギリギリまで使ってしまっていましたし、調べてみると開業資金のために貯めていた貯蓄から100万円ほどの引き出しまで行っていたのです。

 

Aさんは、美容外科医の妻だからある程度は美容にお金をかけてもかまわない、と思っていたそうですが、コンサートに行くのにこんなにお金がかかるものだとは思っていなかったそうで、さすがに堪忍袋の緒が切れてしまいました。

 

Aさんはお金にだらしのない奥さんに激怒し、「すぐに返済しないと離婚する! 窃盗罪で告訴する!」と言い放ち、びっくりした奥さんは実家の両親に泣きついて急いで補填したそうです。

 

夫婦間でも勝手な使い込みは「窃盗罪」になる

Aさんが言ったように夫婦間でも窃盗罪で訴えられるのでしょうか? 刑法では次のように定められています。

 

(窃盗)

第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 

(親族間の犯罪に関する特例)

第244条 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。

 

このように、勝手に預貯金などを使い込んでしまった場合は窃盗罪に問われることになります。しかしながら、犯人が夫や妻など親族間であるならば、刑は免除されるために罰せられることはありません。ですが、当然信頼関係はなくなりますし、離婚となった場合は使い込んだ分の請求を受ける可能性もあります。

 

「妻は結婚するまではそんな趣味があることはおくびにも出しませんでした。愛されていると思って結婚したのですが、お財布目当てだったようですね。愛情の向かっている先が違っていたようです。妻のご両親からは頭を下げて返済してもらいましたが、そろそろ2度目の離婚かな」と、肩を落としてAさんは言いました。
 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表