ひとり暮らし、いざというときに悩む「身元保証人・身元引受人」
老後はどんなにお金があって一人でも大丈夫、と思っていても、入院や介護施設への入所の際には身元保証人などがどうしても必要になってきます。きょうだい等親族で頼りになる人がいる場合は早めに頼んでおくことが必要です。ですが、身元保証人となると支払いの責任義務も伴ってくるため、自分に支払い能力があることの説明も求められるでしょう。
もし、保証人や引受人になってくれそうな人がいなかったり、頼みにくかったりする場合は、身元保証会社を利用することになるのが一般的です。こういった身元保証会社も増えており、株式会社や一般社団法人、NPO法人などの形態があります。
しかしながら、費用は決して安くはないため、余裕のある健康なうちに探しておいたほうがいいでしょう。
総合的な相談場所を知っておく
65歳以上の住民に対し、保険・医療・福祉など総合的に相談にのってくれる場所の選択肢のひとつとして挙げられるのが「地域包括支援センター」です。介護保険法第115条の46第1項で設置が定められており、市町村が設置主体となっていて、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等が配置されています。住民の健康の保持および生活の安定のために必要な援助を行うことで、地域住民の心身の健康の保持および生活の安定のために必要な援助を行う施設とされています。
前述の身元保証会社の紹介などの相談にものってくれるところもあります。令和4年4月末現在、全国で5,404ヵ所が設置されていて、支所を含めると7,409ヵ所となっています。お住まいの地域にある「地域包括支援センター」を健康なうちに確認しておくのがいいでしょう。
旅先で転倒し「終活」を考えるようになったAさんの事例
Aさんは67歳の年金生活の独身女性です。一度結婚したこともありましたが、30代で離婚してからは一人暮らしのほうが気楽に感じ、再婚せずおひとりさまを続けています。
そんなAさんの趣味は全国の鉄道で旅をすることです。月に約15万円の年金のため贅沢はできませんが、節約など生活に工夫をしながら定期的に好きな電車に乗りながら旅行を続けています。
ある日、Aさんは旅行中に階段から転落して骨折してしまい、旅先の病院に担ぎ込まれます。幸い意識がはっきりしていたため、離れて住む73歳の兄に連絡し、甥っ子にも手伝ってもらって自宅から保険証や着替えなどの必需品を病院まで持ってきてもらいました。
「いつも2、3日の旅行だし、健康だと思っていたので保険証を持って歩くといったことは考えてもいませんでした。73歳の兄や奥さん、甥っ子までが病院に飛んできてくれて本当に有難かったです。兄も高齢のため、いつまでも甘えてばかりもいられません。最近は、自分がまたケガをしたり認知症になったりしたらどうしよう、死んでしまったあとの部屋の整理や手続きはどうしよう、と真剣に考えるようになりました」とAさんは言います。
前述の地域包括支援センターのほかにも自治体・社会福祉協議会等にはそれぞれ相談窓口もあります。医療機関にも相談窓口を設置しているところもありますし、弁護士や司法書士も相談に乗ってくれます。時間や資金に余裕があるときに、
・入院や介護が必要になったらどうするか
・死亡したらどうするか
といったことの対策を立てておき、今後のおひとりさま生活を充実したものにしていってください。
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所
代表