今回の相談者は、以前から付き合いのある地方銀行の提案で3,000万円分の「仕組債」を購入したというSさん。10年前に買った「仕組債」であっさりと利益を得ていたため、「今回も大丈夫だろう」と安易に購入を決断しましたが、なんと900万円もの損失を出してしまいます。Sさんの失敗の原因はどこにあったのでしょうか。本稿では、アルファ・ファイナンシャルプランナーズの代表取締役・田中佑輝氏が、「仕組債」のリスクについて解説します。
退職金3,000万円を受給した60歳男性、“なじみの銀行”推奨の仕組債で〈損失900万円〉…どうすれば失敗を避けられたのか?【FP相談事例】 (※写真はイメージです/PIXTA)

FPがアドバイス…仕組債での運用に失敗する要因と3つの注意点

今回、Sさんはなぜ仕組債の運用で失敗してしまったのでしょうか。

 

もっとも問題だったのは、大きく損失を出した商品を購入したタイミングでは株価が高値圏にあり、さらに日経平均株価のような指数ではなく、個別銘柄に連動するものだったにもかかわらず、50歳のころに購入した日経平均連動型の仕組債で良い思いをしたことで、「大丈夫だろう」と判断してしまったことです。

 

仕組債の最大のリスクはノックインによる大幅な元本割れ。ここを軽視しすぎたことが原因です。

 

仕組債でよくノックインの水準として設定されるのは、運用スタート時の株価から60~70%未満になった場合です。いまの相場と将来を分析し、「そこまではさすがに落ちないだろう」としっかり判断できるものであれば購入してよいと考えられますが、一度下回ると、取り返しのつかないくらいマイナス幅で元本が返還されてしまうため、注意が必要です。

 

表面的な高い利回りに左右されることなく、冷静な相場予想ができなければ大損するリスクを孕んだ商品であることを、しっかり認識しなければなりません。

 

また、今回のケースでのもう1つの問題といえるのが、営業マンの言葉を信じすぎてしまったことです。Sさんの話をじっくり聞いてみると、ほとんどの分析結果が営業マンのセールストークのトレースでした。営業マンは売りたい側の人です。売りたい側の分析に乗っかって良いことはありません。

 

それでは、Sさんはどうすれば失敗を避けられたのでしょうか。仕組債で資産運用する際の3つの注意点をみていきましょう。

 

最悪のリスクを知れば違った

最悪の状況(損失が出る可能性)を把握しておくこと。株式投資なら失敗したら損切という選択肢もありますが、仕組債は高いリターンか3~4割のマイナスの二極です。絶対にマイナスにはならないと自信を持てるものでなければ、手を出すべきではありません。

 

とにかくリンクする銘柄の分析を

個別銘柄に連動するものであれば、企業分析をすべきです。そこに自信がない人は、利回りは下がるものの、日経平均株価や為替に連動するものを選択したほうがリスクを低減できます。失敗してから「リスクを見ておけばよかった」と後悔しないよう、商品を購入する際にはとにかくリスクを確認しましょう。

 

余剰資金で運用する

仕組債をはじめとした投資は、余剰資金で運用することが大切です。投資金額を多くして、利益を増やしたいと思ってしまいがちですが、損失が出た場合のことを考慮して、生活防衛費を確保しつつ余裕のある資金で運用しましょう。