「年利10%」で為替変動リスクをカバーできると見込みトルコリラ債券を購入
今回の相談者はメーカー勤務のTさん、59歳。Tさんの長男は結婚して別居中、現在は57歳の奥さんと長女と3人で暮らしています。定年退職後に向けた資産運用について考え始めていたTさんは55歳のとき、とある大手証券会社の営業担当からの紹介で「トルコリラ債券」という商品を知りました。
営業マンの話を詳しく聞いてみると、トルコリラ債券には多少の為替リスクがあるものの、年利はなんと10%。たとえ為替で10%の損失が出たとしても、5年間の合計50%ものリターンで十分にまかなえることになります。その高い利回りに惹かれたTさんは「リスクを考慮しても確実にお金が増やせる」と考え、すぐにトルコリラ債券で2,000万円の運用を開始しました。
しかし、ある問題が発生します。
当時19円強だったリラ/円の為替レートは年々下がり続け、満期が目前に迫ったいまでは5円前後になってしまったのです。
多少の為替変動があっても、「年率10%」の金利でマイナス分は十分まかなえると思って運用を始めたトルコリラ債券でしたが、当時は気づかなかった高い為替手数料も相まって、2,000万円の資金を運用して増やすどころか、気づけば利息ではまったくカバーできないほどの損失を抱えてしまったのです。
そこで、当時の自分がどうすれば失敗を避けられたのか、FPに相談したというわけです。Tさんが失敗してしまったトルコリラ債券とは、どのような投資商品なのでしょうか。詳しくみていきましょう。
トルコリラ債券とは
トルコリラ債券とは、新興国であるトルコが発行している債券で、年利10%以上という高い金利が特徴の投資商品です。
そもそも債券とは、国や地方公共団体などが資金を集めるために発行している証券を指します。債券は満期日が決まっており、決められた金利を基に毎年購入者に利息が支払われ、満期日には元本が返ってくるという仕組みです。
相手方が破綻などしない限りは満期日に必ず元本が返ってくるため、株式と比べてリスクは比較的小さく、人気があります。ただし、債券自体のリスクは低くとも、どの国の債券を購入するかによって総合的なリスクは大きく変わります。
とくに、トルコのような新興国の債券は、日本やアメリカなど先進国の債券に比べて為替変動リスクや国の情勢変化=カントリーリスクがかなり高いため、運用の際には注意が必要です。