自然保護NGOの遺贈担当者が、遺贈寄付の専門家に遺贈や相続財産寄付の基礎知識、今すぐ役立つ準備の進め方のポイントを聞きました。第4回目は「遺贈寄付の進め方」について回答します。

Q.「遺贈寄付」に関心がある場合、どのような手順で考えたらよいでしょうか。

A. 以下に、1.から10.まで主なポイントをリストアップしました。前半部分は、前回のインタビューでも少しお話しましたが、ふりかえりも含めて順にみていきましょう。

 

 

1. 遺贈寄付を知る

国税庁の資料(NPO法人セイエン調べ)によれば、2019年は約168億円、2020年は約397億円、と遺贈寄付をされるケースが増えています。自分の思いを未来へ伝えたい、自分が生きた証を後世に残したい、自分が築いた財産を自分が望む使い道に利用してほしいなど、遺贈寄付に対する想いはさまざまです。

 

私が所属する全国レガシーギフト協会では、ポータルサイト「いぞう寄付の窓口」を制作したり、毎年9月に「遺贈寄付ウィーク」というオンラインセミナー等のイベントを実施しています。そのほかにも、各種の相談サービスや紹介記事などが増えてきているので、インターネットで調べたり、資料を取り寄せたり無料セミナーに参加するなどして、まずは遺贈寄付がどのように社会に役立っているかを実感してみましょう。

 

2. 自分の人生を振り返る

遺贈寄付は人生最期の社会貢献である、とも言えます。大切な財産を寄付するのですから、寄付先の選定は慎重にしたいものです。自分の人生を振り返り、影響を受けた経験や人物などを考えたときに、心の底から応援したいと思える団体や活動が浮かび上がってくるのだと思います。

 

こうした時に役立つのが「エンディングノート」です。遺贈寄附推進機構でも「ご縁ディングノートⓇ」をご用意していますが、自身のこと、医療情報、介護・看病、日頃お世話になっている人の連絡先、財産や相続、葬儀やお墓の希望など、どの項目からでも書き込めるのに便利なようシート式にしています。

 

心の奥にしまっておいた自身の想いや希望を書き出したり、これまでのさまざまなご縁を振り返ることは、改めてご自身で気づいたり、大切に想っていたことを思い出され、大変充実した体験になると思います。

 

3. 遺贈寄付事例の情報を集める

次に、遺贈寄付のさまざまな事例の情報を集めてみましょう。共感できる事例があれば、それが自分にとって最適な遺贈寄付の形に近い可能性があります。

 

たとえば、『遺贈寄付~最期のお金の活かし方』(星野哲:著)という書籍には、さまざまな事例が紹介されています。また、NGOの活動報告書や遺贈寄付パンフレットには、その団体のポリシーや特徴がよく現れていますので、気になる団体に資料請求を申し込んだり、団体が開催しているさまざまなイベントに参加してみるのもよい方法です。

 

4. 専門家に相談する

専門家には、人生を振り返りつつ寄付先の選定をサポートするプランナーの役割と、遺言書の作成をサポートするアドバイザーの役割があります。前者は全国レガシーギフト協会の加盟団体や登録士業など、後者は弁護士や信託銀行などです。

 

遺言に沿って相続手続きを行う遺言執行者に、家族や知人を指定することもできますが、遺贈寄付を確実に実行するためにもプロに任せるのがよいでしょう。遺言書の作成をサポートしてもらった専門家に遺言執行者もお願いすると、遺言作成の背景を知っていますので、遺言執行も安心して任せられると思います。

 

5.寄付先を選ぶ

遺言書は元気なうちに作成しておく必要があるので、遺贈寄付を決めた場合でも、実際に寄付が実行されるのは、数十年後になることがほとんどです。そこで多くの方が悩まれるのが、安心して遺贈を託せる団体なのかどうか、その団体がずっと長く活動が継続できているか、それらのことをどのように調べればよいかということです。

 

応援したい分野や活動をもとにご自分でふさわしい団体を探すのが、最も納得がゆく方法だと思います。また、活動地域が海外か、日本全国か、地元の地域かなど、団体の規模や活動範囲を選択すると、少しずつ自分が支援したい団体が絞り込まれてくるでしょう。

 

ただ、自分で数多くの団体を直接調べるのは大変という場合は、遺贈寄付に関する中間支援団体や、遺言の作成・執行を担う弁護士・司法書士、遺言信託を取り扱う信託銀行などの専門家に、候補団体を複数示してもらえるようお願いすると、意中の候補はかなり絞られているはずです。

 

たとえば、私が所属する全国レガシーギフト協会の「いぞうの窓口」では、「遺贈寄付の倫理に関するガイドライン」を作成し、このガイドラインを遵守する遺贈先団体を活動分野ごとに検索できるWEBサイトを公開しています。https://izoukifu.jp/consideration/partner/

 

気になる団体が見つかったら、ボランティアやイベントなどに参加して団体との相性を肌で感じてみるとよいと思います。実際に少額の寄付をして、期待どおりの反応が返ってくるか確認するのもよいでしょう。数字やデータも重要ですが、感覚も大事な要素なので、いろいろ楽しみながら選定されてはいかがでしょうか。

 

 

 

6. 財産配分を決める

ご自分の保有財産を洗い出して概算の評価額を算定し、相続人や遺贈寄付への財産配分を検討します。遺留分(法定相続人に確保された最低限度の財産)の侵害についても、ここで確認します。ご家族のことを第一に考え、余裕がある財産が残れば遺贈寄付するくらいに考えた方が、円滑な遺贈寄付が期待できます。

 

一般的に、ご家族に財産配分の内容まで知らせることはありませんが、財産の一部を遺贈寄付することだけはご家族にきちんと伝えて、後日驚かれずに済むようにしておくとよいでしょう。

 

相続人がまったくいない方(相続人不存在)は、全財産を特定の団体に、もしくは全財産を複数の団体に割合配分して寄付をする包括遺贈を検討されることがあると思います。包括遺贈の場合は、寄付先団体が債務等のリスクを負う可能性もあるので、包括遺贈の受入が可能な団体が限られます。包括遺贈が受け入れられるか、意中の団体に相談するなど慎重な検討が必要です。

 

7. 遺言書を作成して保管する

4.で相談した専門家に、遺言書の作成まで合わせてお願いすると円滑です。遺言書には、専門家に作成してもらう公正証書遺言と、ご自分で書く自筆証書遺言があります。自筆証書遺言でもよいのですが、その時も専門家のチェックは必ず受けましょう。

 

また、紛失・改ざんなどを避けるために、法務局の遺言書保管制度を利用するとよいでしょう。確実に遺言が執行されるように、定期照会(安否確認)サービスを利用する方法もあります。なお、遺言書は作成時の手数料や保管料、遺言執行時の報酬などがかかりますので、事前にきちんと確認しておきましょう。

 

8. 寄付先とともに人生を歩む

遺贈寄付は、遺言を書いておしまいではありません。ここから豊かな人生が始まります。定期的に寄付先団体と関わりを持つよう心がけましょう。このような姿をご家族に見せることも、後日ご家族の納得感を得る有効な手段です。

 

なお、寄付先に対して気持ちの変化などがあった場合は、いつでも遺言書を書き換えることができるので、安心してください。

 

9. 亡くなった後に遺言が執行される

遺言者が亡くなられると、遺言執行者が相続人や寄付先団体に遺言書の開示を行い、団体にあらためて受遺の意思(承認もしくは放棄)を確認した上で、相続の手続きが開始されます。遺言者が亡くなったことが遺言執行者に確実に伝わるよう、信頼できる方に連絡役をお願いしておくとよいと思います。

 

10. 遺産の一部が寄付される

相続の手続き(換金・名義変更等)が済むと、遺言執行者から団体に指定の寄付金が引き渡されます。人によっては、遺言書の作成から執行まで何十年もかかります。その間に、団体の遺贈寄付担当者が後任に変わっている場合があるでしょう。そこで、遺言書の「付言事項」欄に、遺贈寄付を決めた理由や寄付先に対する志などを記載しておくことをおすすめします。そうすれば、団体に寄付への想いが確実に伝わり、意思あるお金を引き渡すことができます。

 

遺言は書いて終わりではなく、遺言執行がなされて初めて意思が叶えられます。さまざまな制度やサービスを活用して確実に想いを実現させましょう。

 

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日本自然保護協会の自然を守る活動のすべてが、多くの方からのご寄付に支えられ、相続に向けた「遺贈寄付」「相続財産寄付」でご支援をいただく方もいらっしゃいます。

 

大切な資産をどのように未来へつなげていくかは、それぞれ想いやご事情が異なり、必要な手続きもさまざまです。日本自然保護協会では、法務・税務・終活等の専門家と連携し、丁寧かつ慎重にご相談を重ね、ご寄付を最適な形で実現するためのサポートを行っています。

 

日本自然保護協会への遺贈・相続財産寄付は、期限内の申告で非課税となります。また、所得税・法人税の税制優遇の対象です。土地建物や有価証券のままでのご寄付や、包括遺贈、相続人不存在への予備的遺言もご相談を承ります。お気軽に遺贈資料のご請求、ご相談お問い合わせください。

 

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