自然保護NGOの遺贈担当者が、遺贈寄付の専門家に遺贈や相続財産寄付の基礎知識、今すぐ役立つ準備の進め方のポイントを聞きました。第3回目は「遺言の作成に関心を持つ人が増えている理由」などの疑問に回答します。

Q.最近なぜ「遺言」の作成に関心を持つ人が増えているのでしょうか?

A. 夫婦の完結出生児数の推移を1940年から2015年まで表したグラフがあるので、見てみましょう。

 

 

 

遺言書を書く人の平均年齢は、いくつだと思いますか? きちんとした統計が公表されているわけではありませんが、75歳が平均だと言われています。これは、私が信託銀行に勤めていた頃からずっと変わっていません。今年は2023年ですので、75歳の方は1948年生まれになります。それは、団塊の世代と言われる1947~1949年生まれのど真ん中にあたり、そこに今遺言を書き始める人のピークが来ているというわけです。

 

また、1960年代から出生数が急速に減少しているのがわかります。この現在50歳以降の世代が、これから親の相続人となる中心世代になります。親が亡くなった時に子どもがたくさんいれば、それだけ相続争いが起きやすくなりますが、今後相続人の数が減っていくと、「争族解決」が相続の中心テーマではなくなる時代が来るでしょう。

 

そして、次のグラフにあるとおり、生涯未婚率は今後さらに上がっていきますので、人口は減少していく中で、おひとりさまやおふたりさまなど直系の相続人がいない人がどんどん増えていくことになります。

 

 

 

つまり、受け取り手のいない相続財産が増加し、さらに相続財産の資産承継の傾向が「資産保全」「家系」「過去承継」から「社会貢献」「地域」「未来志向」へと変化していくというわけです。そこで、自らが残した財産の有効な活かしか方として、遺言による「遺贈寄付」という選択肢に関心が高まっているのだと思います。

 

Q.遺贈寄付は、はたして世の中で進んでいるのでしょうか?

A. 日本ファンドレイジング協会が発行する「寄付白書」に、40歳以上の人の約40~50%が寄付の経験があり、約20%が相続財産からの寄付に関心を持っているという統計があります。ただ、2017年3月に日本財団が行ったアンケート調査によると、遺贈寄付してもいいと思っている人が20~40%であるのに対し、その想いをきちんと遺言書に書いている方は、独身・子供なしの人でも1.3%にすぎません。

 

「そのうち書くよ」と言っていても、「そのうち」がなかなかやって来ないのが現実です。「遺言書を作るほど財産を持っていないから」「遺言書を作るのは手間がかかりそうだから」「自分にはまだ早いから」、と思われていることなどが主な理由と言われています。また、「遺言」と「遺書」を間違えている方も少なくありません。

 

 

 

遺言書は、財産の多寡にかかわらず、認知力に問題がない心身が健康なうちに用意すべきものです。「まだ早い」と言っているうちに、病気や認知症になって遺言を書けなくなってしまう人を、私は実際にたくさん見てきました。遺言を早めに作成しておけば、「財産が残ったときにどうしておきたいか、意志を示すのに間に合わなくなるかもしれない」、という不安からも開放されます。

 

遺言では、相続人に残す財産を明確にしたうえで、ほんの一部の寄付や相続人がいない場合に遺贈寄付することなども指定できます。「そのうち」を待つ間に、人生最後に大切な社会貢献ができるチャンスを逃してしまうのは、とてももったいないことだと思います。

 

遺贈寄付された財産は、「蓄えられて使われないお金」から「社会課題を解決する生きたお金」に姿を変えます。私は、遺言作成や寄付先の選定、課題に対する解決策やしくみを提供し、遺贈寄付を通じて、誉れと善意の資金が循環する社会をめざしたいと考えています。

 

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日本自然保護協会の自然を守る活動のすべてが、多くの方からのご寄付に支えられ、相続に向けた「遺贈寄付」「相続財産寄付」でご支援をいただく方もいらっしゃいます。

 

大切な資産をどのように未来へつなげていくかは、それぞれ想いやご事情が異なり、必要な手続きもさまざまです。日本自然保護協会では、法務・税務・終活等の専門家と連携し、丁寧かつ慎重にご相談を重ね、ご寄付を最適な形で実現するためのサポートを行っています。

 

日本自然保護協会への遺贈・相続財産寄付は、期限内の申告で非課税となります。また、所得税・法人税の税制優遇の対象です。土地建物や有価証券のままでのご寄付や、包括遺贈、相続人不存在への予備的遺言もご相談を承ります。お気軽に遺贈資料のご請求、ご相談お問い合わせください。

 

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