子どものいない夫婦、身寄りのないきょうだいの相続
ある日、日本自然保護協会の事務局に1本の電話がかかってきました。
「インターネットで検索して、初めて連絡しました。私は埼玉の自宅に住んでおり、5歳上の夫と二人暮らしです。じつは最近、私の親が相次いで亡くなり、相続や死後事務の手続きでけっこう大変な思いをしました。夫はもうすぐ70歳になるところですが、両親は早くに他界しており、子どもがいない私たちは兄弟や甥姪に余計な面倒をかけたくなくて、どちらかが亡くなって一人になった時や、二人とも亡くなったあとが不安なので、今のうちに遺言書を作っておこうと思い立ちました」
さらに話をお聞きしてみると、「二人とも亡くなったあと最終的に残った財産は、何か世の中のためになることに使ってもらいたい、と税理士の方に相談したら、遺言書で社会貢献団体などに財産を贈る遺贈寄付という方法があると教えてもらいました。それで寄付する先を決めたいと考え、ホームページで活動を拝見してこちらの団体にお電話しました」とのことでした。
寄付先を選ぼうと考えたとき、ご自分の人生やご家族の足跡を思い返し、小さい頃よく親に連れられて田舎の野山へ遊びに行き、草花や鳥が好きだったことを思い出して、自然保護に取り組んでいるNGOに寄付したいと思われたそうです。
「私たちがいなくなった後も、自分たちの財産が世の中の役に立つと思うと嬉しいですし、まだ、自分たちが元気なうちに自分で財産のゆくえや使い道を決めておけるのはとてもよいしくみだと思いました」
こうしたケースは、必ずしもご夫婦に限りません。
身寄りのない姉・弟の二人暮らし。遺言書を準備しようと思った最大の動機は、脳梗塞をわずらい後遺障害のある弟の将来を案じてのことでした。
自分がいなくなって弟が一人になった時のことが心配だった姉は、付き合いのある金融機関に専門家を紹介してもらい、そこで初めて遺贈寄付について知ることになりました。そして、互いを第一の相続人にした上で、二人とも亡くなった後の財産を、生まれ故郷の自治体のほか、自然保護、医療支援に取り組む非営利団体へ財産を贈ることを決められそうです。
「遺産を寄付するなんてお金持ちがすることだと思っていましたが、何も高額な寄付を計画する必要はないんですね。財産をすべてきれいに使い切って亡くなるというのは稀なことだと思うんです。遺贈寄付は、自分たちの生涯の生活や亡くなったあとの手続きに必要なお金はきちんと使った上で、最後に残った財産のゆくえについて考えればよいことを知って安心しました」
お子さんがいない「おふたりさま」に安心の「予備的遺言」
相続人や受遣者が遺言者よりも先に亡くなったり、あるいは相続・遺贈を放棄される場合などに備えて、配偶者・兄弟姉妹・事実婚パートナーなど財産を渡したい人をまず定めた上で(=主位的遺言)、さらにその先の相続・遺贈先を自身であらかじめ指定しておくことを「予備的遺言(=補充遺言)」といいます。
近年、「自宅には夫婦どちらかが最後まで住み続けたいが、二人とも亡くなった後は、想い入れのある団体に遺贈寄付したい」という人が増えています。このような希望を叶える方法として、予備的遺言(補充遺言)が使えるのです。「私は、自宅の土地建物を妻に相続させる。ただし、妻が先立って死亡した場合はこの非営利団体に遺贈する」といった予備としての遺贈を指定する遺言を残しておけばよいわけです。自宅以外の財産についても、妻の次の行き先を遺贈寄付として指定しておけば安心です。妻も同様の趣旨の遺言を作成することで、夫婦の財産を確実に世の中の役立てることができます。
また、遺留分の取得権がない兄弟や甥姪に相続をしない場合や、相続人が一人もいない場合、「全財産を●●団体に寄付する」というような「包括遺贈」(参照:連載第13回)とする遺言書をつくる際は、葬儀や死後事務など亡くなったあとのさまざまな手続きを専門家が行ってくれる「死後事務委任契約」を結び、それらにかかる費用も残された遺産から差し引くことなどを遺言書に明記しておくとよいでしょう。
遺言執行と死後事務委任は、同時進行で手続きが進められることが多いので、緊密に連携がとれる方々に依頼しておくと安心です。
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日本自然保護協会の自然を守る活動のすべてが、多くの方からのご寄付に支えられ、相続に向けた「遺贈寄付」「相続財産寄付」でご支援をいただく方もいらっしゃいます。
大切な資産をどのように未来へつなげていくかは、それぞれ想いやご事情が異なり、必要な手続きもさまざまです。日本自然保護協会では、法務・税務・終活等の専門家と連携し、丁寧かつ慎重にご相談を重ね、ご寄付を最適な形で実現するためのサポートを行っています。
日本自然保護協会への遺贈・相続財産寄付は、期限内の申告で非課税となります。また、所得税・法人税の税制優遇の対象です。土地建物や有価証券のままでのご寄付や、包括遺贈、相続人不存在への予備的遺言もご相談を承ります。お気軽に遺贈資料のご請求、ご相談お問い合わせください。