厚生労働省によると、年金の平均受給額は国民年金がおよそ5万6,000円、厚生年金がおよそ14万6,000円といわれています。そのようななか、Rさん(55歳)は年収が680万円もありながら、年金見込額はなんと「月9万円」と、平均を大きく下回っています。このままでは老後破産の危険性も……そこで、株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、事例をもとに「将来受け取る年金額」の増やし方を解説します。
年金月17万円のつもりが実際は「月9万円」で老後破産の危機…年収680万円の55歳サラリーマン「将来の年金受給額」を増やす方法【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

Rさんがいまからでもできる「3つ」の年金対策

Rさんが取り組める対策としては、下記の3つが考えられます。

 

1.60歳以降も働く
2.年金の「繰り下げ受給」をする
3.iDeCoとNISAを利用して自分年金を確保する

 

1.60歳以降も働く

定年はいまや、「60歳」から「65歳」が定番になりつつあります。60歳が定年の会社であっても、希望すれば「再雇用」として65歳まで働き続けられるようになっているところが少なくありません。

 

そこで、年金の受給額を増やす方法としてこの制度を利用し、1年でも長く働いて厚生年金の加入期間を延ばすという選択肢があります。

 

厚生年金の加入期間は70歳までですから、Rさんの場合はなんとかしてそこまで働き続けたいところです。

 

2.年金の繰り下げ受給をする

国民年金や厚生年金といった公的年金は、原則として65歳から受給開始となっていますが、年金の受給開始年齢は自分で選択することができます。

 

繰り下げ受給」を選択した場合、受給する年金額は「繰り下げた月数×0.7%」となり、1年間遅らせると8.4%(0.7%×12ヵ月)、5年間遅らせれば42%(0.7%×60ヵ月)の増額となります。

 

もし健康で70歳まで働けるのであれば、年金の受給開始を70歳と繰り下げることで、受取額を42%増やすことができます。

 

Rさんの場合、70歳まで繰り下げれば、年金受給額は現在の約9万円から約13万円(9万円×1.42=12.78万円)に増やせます。さらに、75歳まで繰り下げられるのであれば年金額は84%増加しますから、受給額は約17万円にできます(9万円×1.84=16.56万円)。

 

3.iDeCoとNISAを利用して自分年金を確保する

投資信託などで運用して利益があると、本来であれば源泉分離課税20%ほどの税率がかかりますが、「iDeCo」や「NISA」を利用すれば利益を得ても非課税となります。足りない老後の生活費を準備する方法として有効です。

 

55歳のRさんは「老後まで時間がない」と焦っていますが、仮に毎月5万円を10年間、投資信託のバランス型(利回り4%想定)で積み立て投資すれば、投資額600万円が730万円ほどになります。退職金と合わせて活用すれば、最低限の老後資金は確保できるのではないでしょうか。

 

また、国民年金の免除や猶予などを受けた方は、10年以内であれば追納ができます。Rさんの場合期限が過ぎてしまっていますが、まだ追納が可能な方は年金受給額を増やすことが可能です。

 

Rさんのように老後の年金受取額について慌てることがないように、毎年の誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」については若いうちからしっかり内容を確認しておくようにしましょう。

 

 

武田 拓也

株式会社FAMORE

代表取締役