自然保護NGOの遺贈担当者が、遺贈寄付の専門家に遺贈や相続財産寄付の基礎知識、今すぐ役立つ準備の進め方のポイントを聞きました。第2回目は「相続や遺贈が注目される理由」などの疑問に回答します。

Q.「相続」や「遺贈」は、なぜ今大きく注目されるのでしょうか?

A. それは、現在の日本の人口問題が大きく関係しています。

 

人口の増加推移と高齢化率を示したグラフ「国土の長期展望」中間とりまとめ概要より(国土交通省作成)
人口の増加推移と高齢化率を示したグラフ「国土の長期展望」中間とりまとめ概要より(国土交通省作成)

 

江戸時代の中期は3,000万人ちょっとだったのが、明治維新の頃から一気に増え始め、今から20年ほど前に1億2780万人超とピークを迎えましたが、2100年には4,700万人まで減少すると推計されています。また、人口ピーク時には20%弱だった高齢化率が、100年後の2100年には2倍の40%超まで増加すると言われています。

 

人口減少の原因は、晩婚化・出生率の低下・生涯未婚率の上昇などが考えられます。おひとりさまの増加が人口減少につながっているとも言えそうですが、そこには社会的な問題が背景にあると思います。国が少子化対策の政策を今すぐ加速しても、人口減少の流れはそう簡単には止められないでしょう。

 

人口増加の時期は、高度経済成長の時期とも重なり、大多数の人が経済成長の恩恵を享受できた時代でした。しかし、人口減少の時代はそうはいきません。人が減れば消費が減り、経済成長が難しくなります。このままでは、得られる富が減ってごく一部の人に集中し、多くの人が貧困に苦しむ社会になってしまいます。

 

そこで注目されているのが、「老老相続」問題や相続者がいない財産の使い方なのです。

 

Q.「老老相続」とはどういう相続でしょうか。

A. 日銀によれば、個人の金融資産は2023兆円あるそうです(2022年12月末時点)。これに不動産などを加えた資産の大半を、高齢者が保有しています。そして、毎年50兆円とも言われる資産が相続で動いていますが、財務省主税局の調査では、2019年には被相続人の死亡時の年齢が80歳以上の方が71.6%を占めているので、財産を引き継ぐ子は60歳以上が大半ということになります。

 

こうした高齢者から高齢者へ相続される「老老相続」では、引き継いだ財産の大半が貯蓄に回され、消費や投資行動が緩やかな世代間で資金移転が繰り返されることになり、経済活動や社会貢献活動へなかなか資金が巡らない状況が加速します。さらに、相続人不存在で国庫に帰属された遺産は、2021年には647億円と過去最高まで上っています。

 

そこで、相続で動く50兆円のうちたった1%でも、遺贈寄付や遺産からの寄付として公益団体やNPO団体に回れば、毎年5000億円もの資金が貧困対策や自然保護など、社会課題の解決のために活用されることになるわけです。

 

Q. 多くの人が幸せにくらせる社会を実現するために、どんな考え方や方法が必要でしょうか。

A. それはおそらく、個人に責任を負わせる「自助」ではなく、国や行政に頼る「公助」でもなく、お互いを支え合う「共助」をさらに推進するしかないように思います。「共助」には、ご近所や地域単位で支え合ったり、教育や貧困などの活動テーマごとに支え合うなど、支える組織形態も個人やサークル、NPOや公益財団などさまざまです。

 

今は支える側にいる人も、事故に遭ったり、病気や認知症になったり、失業したり、障害者の家族を持つなど、突如として支えられる側になることがあるわけです。「固定化された弱者」というよりも、「誰でも弱者になる可能性がある」「人生には弱者になる時期がある」と考えるべきでしょう。弱者になる時期を乗り越えるために、お互いに支え合う意識やしくみが必要なのではないでしょうか。

 

社会課題の解決にはお金が必要です。しかし、善意だけでは限界があります。その財源として期待できるのが「遺贈寄付」や「遺産からの寄付」だと、私は考えています。病気や介護など万一に備えた資金を、使い切ることなく亡くなる方も少なくないでしょう。その残った財産の100分の1でも寄付することを皆が遺言に書いておくことで、共助社会の実現に貢献し、人口減少の時代をソフトランディングして社会課題を解決していく助けができるのです。

 

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日本自然保護協会の自然を守る活動のすべてが、多くの方からのご寄付に支えられ、相続に向けた「遺贈寄付」「相続財産寄付」でご支援をいただく方もいらっしゃいます。

 

大切な資産をどのように未来へつなげていくかは、それぞれ想いやご事情が異なり、必要な手続きもさまざまです。日本自然保護協会では、法務・税務・終活等の専門家と連携し、丁寧かつ慎重にご相談を重ね、ご寄付を最適な形で実現するためのサポートを行っています。

 

日本自然保護協会への遺贈・相続財産寄付は、期限内の申告で非課税となります。また、所得税・法人税の税制優遇の対象です。土地建物や有価証券のままでのご寄付や、包括遺贈、相続人不存在への予備的遺言もご相談を承ります。お気軽に遺贈資料のご請求、ご相談お問い合わせください。

 

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