損失を出したら喜ぶ、大儲けを出したら反省する
利益を上げるためにトレードをやっているのに、損して喜ぶとか大儲けできたら反省するなんて、おかしいと思う方も多いことでしょう。
でも、多くのトレーダーは、勝ち続けていると調子に乗っていきます。自分では謙虚でいるつもりでいても、内心は毎日満員電車に揺られて通勤する人たちに対して優越感を抱いたり、自分は勝ち組だといった感覚に陥ったりするようになっていきます。
こういう状態が続くと、いつしか万能感に似た感覚を持つようになり、手出しをしてはいけない相場でエントリーしてしまったり、損切りを先送りするようなトレーダーになってしまいます。
自分は天才トレーダーかもしれない、と思いかけていたときに大損を食らうショックは大きく、自暴自棄になってしまったり再起が難しくなるほどの精神的なショックにつながったりもします。
しかし、致命的な損失を経験することは最終的には原点に戻ることにつながります。
自分は何年もトレードをやってきたのにいったい何を学んできたのか、なんで同じ失敗ばかりやらかしてしまうのか、毎日満員電車に乗って通勤している人のほうがよほど生産性が高いじゃないかと痛感させられるのです。
そこでようやく謙虚さを取り戻し、正しいエントリーポイントまでフライングせずに待とう、利益も1%で十分だ、という気持ちになれるのです。
心が初心に戻っても、積み上げてきた知識量や経験はビギナーだったころより飛躍的に向上しているので、そのときを境に勝てるようになるケースはよく見られます。
本来は大損を出すことなく、ずっと謙虚な心のままで知識と経験を積み重ねていくことが理想ですが、多くの人はときどき手痛い失敗を経験しないと初心を持ち続けることができません。
だから、損失を出すことは勝ち続けるトレーダーになるために必要な経験なのです。
大儲けしたときに反省するというのも同じです。簡単に20%ぐらい稼げるような日は実際にあります。そんな日は20%稼いだっていいじゃないか、と思うかもしれませんが、それが破滅の始まりになってしまうことが往々にしてあります。
たとえば、300万円を元手に日利1%を目標にしている人が、1日で20%を稼いでしまったら、1か月の利益目標を1日で達成してしまったことになります。そうすると、日利1%をコツコツ稼ぐのがばかばかしく感じられ始めます。
しかも予想外の利益を得てしまった背景には、なんらかのルール破りがあることが大半です。ルールを破って大儲けする経験をしてしまうと、当然それからはルールを守らなくなるでしょう。ルールを守らなければ、近い将来に大損します。それがトレードを続けられなくなるような事態を引き起こしてしまうのです。
僕たちトレーダーは瞬間的に大きな利益を出せばそれでいいのではなく、将来も持続的に稼ぎ続けなければ意味がありません。大儲けや大損をしてメンタルの振れ幅を高めてしまう事態は、感情的なトレードを引き起こす最も危険な導火線のひとつです。
損は小さく、そして利益も小さく、過剰に喜んだり落ち込んだりすることなく淡々と利益を積み上げていくことが、持続可能なトレードにつながるのです。
ちなみに僕は、調子が良すぎるときにはあえて損失を出す、ということをときどきやっています。
偉そうにこんなことを書いているような人間でも、調子よく利益を積み上げる日々が続くと「損切りをするから利益を積み上げられる、損切りをするから謙虚にチャンスを待てる」ということを忘れてしまうことがあるからです。
恰好をつけた言い方になりますが、損切りの価値を認め、損切りを愛し続けることを忘れないためにも、損切りは必要なのです。
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