Q.「遺贈」とは耳慣れない言葉ですが、何なのか教えてください。
A.「遺贈(いぞう)」とは、遺言によって財産を無償で譲与することを言う民法上の相続用語です。遺贈する相手は法定相続人に限らず、法定相続人以外の第三者や法人も可能です。「遺贈」が自分の相続財産を第三者に単に分け与えることに対して、「遺贈寄付」は公益団体・学校・自治体などに財産を譲与してその活動を支え、社会課題の解決につなげることを言います。
「寄付」も「遺贈寄付」も、社会課題の解決をめざす団体や事業に財産を無償で提供することは同じです。しかし、「寄付」は「今」、「遺贈寄付」は「将来、自分が死亡したあと」に寄付をする時点が異なります。
「遺贈寄付するほどの財産は自分にはない」と思われるかもしれませんが、ご自身が亡くなる時期はわかりませんから、苦労して貯めた老後資金をきれいに全部使い切って亡くなることはできません。遺贈寄付は、そうやって残った財産の中から、少しだけ社会に還元しようという考え方です。
今、多額の寄付をすることが難しくても、自分が亡くなった時であれば、ある程度まとまった金額を寄付できることもあるでしょう。たとえ少額でも、立派な遺贈寄付です。誰もが無理のない範囲でできるのが、遺贈寄付の特徴のひとつだと思います。
Q.遺贈寄付の意思は、どうやって残せばよいのでしょうか。
A.最も一般的な方法は、遺贈寄付を含む財産の配分について遺言書を作成しておくことです。そのほかにも、遺贈寄付ができる方法はいくつかあります。
【生前にできる遺贈寄付の方法】
●遺言による寄付
・財産の全部または一部を民間非営利団体等に寄付することを遺言で残す
・寄付者:遺言者
●死因贈与契約による寄付
・寄付者が民間非営利団体等との間で死亡後に寄付が実行される内容の贈与契約を締結する
・寄付者:契約者
●生命保険による寄付
・寄付者が生命保険に加入し、死亡保険金の受取人に民間非営利団体等を指定する
・寄付者:保険契約者
●信託による寄付
・信託を引き受ける者との契約によって財産の全部または一部を非営利団体等に寄付することを約する
・寄付者:委託者
【死後にできる遺贈寄付の方法】
●相続財産の寄付
・手紙、エンディングノート、言葉などで遺族に相続財産の全部または一部を寄付することを伝える
・寄付者:相続人
●香典返し寄付
・遺族が香典のお返しに代えて、個人が支援していた団体に寄付する
・寄付者:遺族
生前に自分で手続きする方法としては、「死因贈与契約による寄付」「生命保険による寄付」「信託による寄付」などがあります。一方、亡くなった後に相続人や遺族が手続きする方法として、手紙やエンディングノートなどに遺産の一部を非営利団体等に寄付してほしい旨を書いておく「相続財産の寄付」「香典返し寄付」などがあります。寄付の意思の残し方や実際の寄付者がそれぞれ異なりますので、自分に合った方法を選択するとよいでしょう
Q.遺贈寄付をするには、何から始めればよいでしょうか。
A.相続や遺言に関わることを自分一人で行うのはなかなか難しいので、まずは遺贈寄付にくわしい専門家への相談から始めるのがよいでしょう。とは言っても、いきなり弁護士事務所や信託銀行などに問い合わせるのは少し敷居が高く感じられるかもしれませんし、どこに遺贈寄付にくわしい人がいるのかもわかりませんよね。
そうした時のために、私が所属する一般社団法人全国レガシーギフト協会では、「いぞう寄付の窓口」という遺贈寄付のポータルサイトをつくり、遺言の書き方や遺贈先の選定、遺贈寄付の相談先などを発信しています。
「いぞう寄付の窓口」では、全国の「加盟団体」に無料で相談することもできます。加盟団体が特定のNGOへの寄付を誘導したり、遺贈寄付を強要するようなことはありません。地域ごとに弁護士や税理士などの専門家と連携し、遺贈寄付をご希望される方をサポートする体制を整えており、気軽に相談できるところが魅力です。
「日本承継寄付協会」▶https://www.izo.or.jp/
また、一般社団法人日本承継寄付協会では遺贈寄付について専門的な知識を持つ承継寄付診断士を育成し、全国の相談窓口で、寄付についての法務や税務手続きなど、誰もが気軽に遺贈寄付の手続きができるためのサポートを行っています。
「日本承継寄付協会」▶https://www.izo.or.jp/
わたくしどもの遺贈寄附推進機構でも、相続や遺贈寄付における問題点の整理や、経験豊富な専門家のご紹介を承っています。日本自然保護協会でも、遺贈寄付にくわしい銀行・士業・会社などの紹介サービスを行っていますので、寄付をするかどうか決まっていなくても、まずは担当スタッフに相談されてみてはどうでしょうか。
Q.専門家への相談の前にすべきことはありますか。
A.それは、「私はなぜ遺贈寄付したいのか」をじっくり考えることです。寄付先を考える時、何の縁もゆかりもない団体を選ぶ人は少ないと思います。自分の人生を振り返り、自分に大きな影響を与えた経験・できごと・人物・理念などを思い浮かべ、これに関係する団体や活動を応援したいと考えて寄付をするのではないでしょうか。
こうしたことを整理するのに役立つものの一つが「エンディングノート」です。遺贈寄附推進機構でも「ご縁ディングノートⓇ」をご用意していますが、これまでのさまざまなご縁を振り返り、未来を生きていくために、自身の想いや希望を書いて整理してみることは大切なはじめの一歩です。
そうは言っても、自分一人だけで想いを書き上げるのは大変なので、やはりできるだけ早い段階から専門家に相談するとよいと思います。専門家にとっても、寄付者の背景・歩み・考え方を知っておくことはとても大切ですので、人生の内面を深掘りするプロセスをきっと喜んで手伝ってくれることでしょう。
Q.遺贈寄付を考える時に注意すべきことはありますか。
A.それは、「残された家族・相続人を第一に考える」ことと「寄付先団体の事情にも配慮する」ことです。
法定相続人の遺留分を侵害しない財産配分にするだけでなく、残された家族や相続人との生前の関係や心情などにも十分配慮した配分を考えることが、円滑で不満のない相続には重要です。また、死後に家族が遺言に遺贈寄付があることを知って驚かないようにすることも大切です。生前から寄付先団体に少しずつ寄付をしたり、団体から郵送される活動報告等に家族が目を留めることができるようにするのも有効な方法です。
また、寄付を受ける団体も、必ずしも遺贈寄付の受入れ実績が豊富な所ばかりではありませんし、あらゆる財産を受けられるわけでもありません。たとえば、不動産や有価証券のままでの寄付や、全財産もしくは全財産の一定割合を寄付する包括遺贈を受けられない場合もありますので、あらかじめ寄付先団体に確認することが大切です。最近は、遺贈寄付に関するセミナーなどが増えてきたので、気軽に参加してみてはいかがでしょうか。
****************************************
日本自然保護協会の自然を守る活動のすべてが、多くの方からのご寄付に支えられ、相続に向けた「遺贈寄付」「相続財産寄付」でご支援をいただく方もいらっしゃいます。
大切な資産をどのように未来へつなげていくかは、それぞれ想いやご事情が異なり、必要な手続きもさまざまです。日本自然保護協会では、法務・税務・終活等の専門家と連携し、丁寧かつ慎重にご相談を重ね、ご寄付を最適な形で実現するためのサポートを行っています。
日本自然保護協会への遺贈・相続財産寄付は、期限内の申告で非課税となります。また、所得税・法人税の税制優遇の対象です。土地建物や有価証券のままでのご寄付や、包括遺贈、相続人不存在への予備的遺言もご相談を承ります。お気軽に遺贈資料のご請求、ご相談お問い合わせください。
日本自然保護協会への遺贈・遺産からのご寄付について資料請求・お問い合わせはこちらから