団塊の世代の70代男性…老後に直面した「まさか…」
――毎月の年金は8万円ほど。お小遣いですね
そう話すのは、70代半ばだという老婦人。悠々自適な老後の暮らしを垣間見られるコメントです。
70代半ばということは、いわゆる団塊の世代。戦後の第1次ベビーブームに生まれ、日本の高度成長の立役者とされる人たち。「毎年、経済は成長するのが当たり前」という時代に生きてきたからか、現役を引退し、年金生活でも余裕がある人が多くを占めます。厚生年金受給者の平均年金受取額*をみても、65歳では14万5,372円ですが、75歳を境に徐々に増え、79歳では15万1,874円、84歳では16万0,349円と、年金世代の中でも経済的に余裕のある世代だといえます。
*厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』より
一方で、「こんなはずではなかったのに」と後悔を口にする団塊の世代も。
――まさか、年金で生活できないとは思ってもみなかった
70代後半の男性。年金は夫婦で手取り15万円ほどだといいます。それで十分かどうかは議論が分かれるところですが、この男性のように本気で「年金だけで暮らしていける」と考えていたのが団塊の世代。しかし男性の場合、年金だけでは生活できず、自身は週に2日、まだ60代だという奥さんは週5でアルバイトをして生計を支えているといいます。
高度成長期を経験した団塊の世代、十分な貯蓄もあるでしょうに……と思いきや、余裕ある暮らしができるほど貯蓄はないと男性。そこには2つの誤算がありました。
まず「バブルを謳歌しすぎた」ということ。日本経済がイケイケだった時代、働き盛りだった団塊の世代は、いまでは考えられないようなお金の使い方をしていました。もちろん、そのなかでも堅実に資産形成をしていた人もいましたが、「何とかなる」とお金を使えるだけ使う人も多くいました。「あの時のお金を少しでも貯めこんでいれば……」と後悔の念を抱く人も多いのです。
金融広報中央委員会の調査によると、70代で「貯金なし」は18%ほど。また金融資産があっても「100万円未満」という70代は5.5%います。十分な資産を築けずに、年金生活に突入した団塊の世代は珍しくはないのです。
誤算の2つ目は「子どもと孫との同居」。離婚をした娘が孫を連れて実家に戻ってきたという男性。育ち盛りの孫のことを考えると家族の生活費は足りず、それをカバーするためにもアルバイトに精を出す日々を送っているといいます。
厚生労働省の調査によると、ひとり親世帯の8割近くが、離婚を理由にひとり親世帯になっています。3組に1組は離婚するといわれている昨今、孫を連れて実家に出戻るケースも多いでしょう。このとき団塊の世代の親が経済的に裕福であれば問題はありませんが、貯蓄は心許なく、年金だけでギリギリの生活を送っている場合は大人総出で働きに出るというのが現実的です。