2025年には65歳以上の高齢者1人を2人の現役層が支える超高齢化社会に突入するといわれています。そんななか、気になるのは公的年金制度がこの先も維持されていくのか、年金を受け取れるのかということです。この点について、経済ジャーナリストの荻原博子氏は、年金そのものが破綻することはないと断言します。なぜでしょうか。荻原氏の著書「年金だけで十分暮らせます」(PHP研究所)より、一部抜粋して紹介します。
「年金破綻」は絶対にないが…国民の負担を増やすため政府が仕組んだ「5つのテクニック」【経済ジャーナリストが解説】

(3)支給開始年齢を引き上げる

これは、1956年以前は、厚生年金の支給開始年齢が男性55歳、女性55歳でした。これが、男性だけ1957年から16年かけて4年に1歳ずつ支給開始年齢が引き上げられ、1973年には60歳となりました。

 

さらに1985年の改正で、女性も60歳に引き上げられ、1994年の改正では、男性、女性とも65歳になりました。会社員は、老齢基礎年金の上に報酬比例部分という上乗せ(特別支給の老齢厚生年金)がありますが、こちらも支給開始年齢を徐々に引き上げ、男性は2025年、女性は2030年には、完全に65歳となります。

 

そういう意味では、まだ厚生年金の支給開始年齢は引き上げの最中ですが、すでに「70歳支給開始でどうか」という話が出始めています。

 

これまで、年金が「破綻」しないように、(1)、(2)、(3)のための法改正が繰り返し行われてきましたが、実は、ここにきて4つ目の新たなテクニックが出てきました。

 

(4)公的年金の加入者を増やす

これは、働く人みんなから、できるだけ多くの年金保険料を集めようというものです。今までは、パートなどで働いていても、年収が130万円に満たなければ、夫が会社員や公務員の妻は夫の扶養家族ということで、自分では1円も年金保険料、健康保険料を支払わなくても、国民年金、夫の健康保険に加入していることになっていました。

 

それが、2022年10月以降は、学生ではない、従業員101人以上の企業に勤めるパートは、月収が8万8,000円を超え、週の所定労働時間が20時間以上で、2ヶ月以上勤めるなら、会社の厚生年金、健康保険に加入して、保険料を支払わなくてはならなくなりました。

 

さらに、2024年10月からは、従業員101人以上というハードルがさらに下がって51人以上の企業に勤める学生ではないパートは、労働時間が週20時間以上、月収8万8,000円以上で、2ヶ月以上勤めるなら会社の厚生年金、健康保険に加入して保険料を支払うことになりました。今まで保険料を支払っていなかった会社員や公務員の妻も、年金の支え手になるというわけです。

 

政府が仕掛けた「5つのテクニック」で国民負担の増大は不可避

このように、政府は、年金制度を維持するため、「国庫負担比率を上げる」に加え、(1)「保険料を上げる」、(2)「給付額を減らす」、(3)「支給開始年齢を引き上げる」、(4)「公的年金の加入者を増やす」の全部で5つのテクニックを駆使することができます。

 

したがって、年金が「破綻」するという事態はなかなか起こりにくいことはご理解いただけたかと思います。しかし、「破綻」はしにくいけれど、今の年金制度を継続するために、国民に多くの負担を強いるようになるのは避けられないでしょう。

 

もちろん、すでに年金をもらい始めているという人は、(1)「保険料を上げる」、(3)「支給開始年齢を引き上げる」、(4)「公的年金の加入者を増やす」は関係がなくなっているので、影響はその分少なくなります。

 

 

荻原 博子

経済ジャーナリスト