(※画像はイメージです/PIXTA)

昨年、ウクライナ侵攻をきっかけに幕を開けた「大インフレ時代」。物価上昇が続くものの給料は上がらず、我々の生活を圧迫しています。そんななか、資産防衛術として視野に入れたいのが「外国債券」だと、FP office株式会社の髙屋亮氏はいいます。日本が置かれている現状と外国債券投資のメリット・注意点についてみていきましょう。

インフレなのに国内景気が回復しないワケ

「こんなに物価が上がるものなのか」

 

現在40代以下の人は、そう感じているはずです。

 

高度経済成長期には、所得上昇とともに年7%程度のインフレ(物価上昇)の好循環がありましたが、1990年頃、バブル景気のインフレ3%強を境に日本は景気後退へ向かい、1999年には物価の前年比がマイナスに。その後、20年以上にわたって大幅な物価上昇はなく、「物価が変わらない」あるいは「物価が下がる」というのが私たちの平時の認識となっていました。

 

そんななか、突如始まったのが現在のインフレです。

 

2022年初頭のウクライナ侵攻を皮切りに、エネルギー資源や穀物をはじめとした世界の貿易体制に混乱が生じ、各資源を輸入で賄っている国の輸入コストが急騰する事態に陥っています。

 

OECD諸国では、2022年春以降から消費者物価指数が前年同月比8~9%上昇し、国内でも昨年は平均で2.5%ほど、直近2023年3月時点では3.2%と、家計を圧迫しています。

 

日銀は2013年に「物価安定の目標」として前年比上昇率を2%と定めていましたが、ここでひとつ疑問に思われるのは「では、日銀は目標を達成したのか」という点です。“事実上の達成”という論調で政策変更を迫るような記事もありますが、結論からいうと「まだ目標達成はしていない」が正しいでしょう。

 

経済用語では、「インフレ=継続的な物価上昇」、「デフレ=継続的な物価下落」とされていますが、実はこれが前述の誤解を生む要因となっています。

 

本来の語源から考えると、「インフレーション」という単語は「膨張」という意味です。つまり、モノ・サービスの供給以上に欲する側の需要が膨らむと供給が不足し、そのギャップを埋める過程で価格が上がり、均衡を保とうとするサイクルが一般的なインフレです。

 

しかし、「物価上昇=需要膨張」かというと、そうとは限りません。昨年から日本国内においては、“経済は停滞しているが物価は上昇する”という「スタグフレーション」の様相を呈しています。

 

今般の物価上昇は原材料高騰による「コストプッシュ型インフレ」と呼ばれるものですが、これが海外からの輸入資源が要因の場合、国内景気を回復させる要素はまったくないのです。国内景気を表すGDPに、この輸入費用は含まれていません

 

輸入された商品を購入する消費者も、同じ財を高く買った分、支出を控えるマインドに向かうため、むしろ国内景気の需要収縮(デフレーション)に拍車をかけます。

 

※ たとえば、1,000円の原材料に100円の価値を加えて1,100円の商品を販売していた国内業者が、原材料の輸入資材100円アップを受けて1,200円で販売しても、コストが上がっただけで利益は100円のまま。輸入費のアップは、輸入元の所得が増えるだけです。

 

この状況下で「インフレ2%達成だから金融引き締めを」とは、日銀もならないでしょう。

 

「生産(付加価値)=分配(所得)=支出(需要)」という三面等価の原則からわかるように、あくまで需要が膨らみ、企業の生産が増え、国民の所得が上がるという好循環のなかで2%物価が上昇するのが望ましいのであり、単に物価さえ上がればいいというわけではないのです。

 

※ 三面等価の原則……経済はモノ・サービスの生産→生産されたモノ・サービスの分配→分配された価値の支出の循環により成り立っていることから、GDP(国内総生産)を生産・分配・支出という3つの観点からみたとき、これらは常に同じ金額になるという法則。

 

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