集患におけるSNSの強みとホームページ(ネット検索)との違い
一般的なクリニックホームページは、「必要な情報を探している」患者に対して情報を届けられる(プル型)情報媒体ですが、SNSは能動的に情報を探しているわけではない人に対しても情報が届けられる(プッシュ型)情報媒体であることが特徴です。
悩み(症状)があっても解決しようと検索行動に移していない人や、現在通院中の他クリニックに何かしらの不満を抱えている、というような「潜在的な患者」にも情報が届くというのが、SNSの最大の特徴でしょう。
また、予防接種や流行中の感染症の情報、季節ごとの健康アドバイスなどを発信することで地域住民たちの目に留まり、短期的には自院の患者とならなくても、いざ通院が必要なときに「安心できる医療機関」として自院を想起してもらえる、という利点もあります。
つまり、ホームページは「すでに悩みが顕在化しており、受診先を探している人」に対して情報を届ける“顕在層向け”のマーケティング媒体であるのに対し、SNSは「悩みはあるが検索行動にまで至っていない人、将来の患者になり得る人」に対して情報を届ける“潜在層向け”のマーケティング媒体であるといえるでしょう。
このようにSNSは、ホームページとは違ったアプローチで今までと異なる層への情報提供ができるため、中長期的な集患力をつけていくことに向いている媒体といえます。
患者との信頼関係を築くためのSNSの効果的な運用法
SNSはクリニックの「顔」として、施設の雰囲気や医師・スタッフの人柄が伝えられる場です。診療科などの専門性をアピールするだけでなく、クリニックの日常やスタッフの紹介、院内イベントの様子などを投稿することで、医療機関としてのかしこまった顔だけでなく、地域に溶け込む「人間味」を感じてもらえます。
当社のクライアントのなかには、地域との交流イベント(勉強会やマルシェ、年始の餅つき大会など)を積極的に行い、その様子をSNSを通じて発信することで、地域コミュニティの一員として、住民生活のなかに溶け込むことに成功したケースも。
「何か困ったことがあれば〇〇クリニックに」という立ち位置を築くことで、結果として、集患にも役立っているようです。
採用活動におけるSNS活用のメリット
採用活動においても、SNSは「クリニックの日常や人間関係」を求職者に伝える強力なツールです。ホームページは患者向けの情報である医療内容や診療方針に重点を置きがちですが、SNSでは職場環境やスタッフ同士の雰囲気、リアルタイムの採用イベントなどを柔軟に発信できるため、求職者に働くイメージを持ってもらいやすくなります。
働きやすさやスタッフ同士の協力体制などが伝われば、「ここで働いてみたい」と感じるきっかけにもなるでしょう。
実際、求職者が何かしらの求職サイトでクリニックのことを知ったあとに、ホームページやSNSを探し、「職場の雰囲気がわかりやすかった」「職場環境や同僚の顔が見られたことで働くイメージが湧いた」ということで応募につながったケースも多数あります。
求職者からの信頼を得るためのSNS運用のポイント
求職者にとって、職場選びにおける「価値観や働き方のすり合わせ」は重要な要素です。SNS投稿を通じてクリニックの雰囲気や働きやすさを伝えることで、単なる「求人情報」から一歩進んだ“信頼”と“共感”を獲得できます。
またSNSの種類によっては動画コンテンツも交えた情報発信をすることで、よい意味での“生々しさ”を感じてもらうことができるでしょう。
一方で更新頻度が極端に少なかったり最終更新日が古かったりした場合、「今は募集をしていないのかな」と思われ逆効果になるリスクもあります。SNSは戦略的に、計画性をもって運用するようにすることが大切です。
地域に「選ばれるクリニック」となるため、SNSの積極的な活用を
SNSは、現代のクリニック経営において集患と採用の両面で大きな効果を発揮するツールです。ホームページが「検索されること」によるアプローチである一方、SNSは地域での認知度を高め、「潜在的」な患者や求職者にアプローチができるメディアであり、両方を活用することでターゲットの幅を広げることができます。
しかし逆にいうと、同じ地域での競合クリニックがすでにSNSに力を入れていた場合、「潜在的な患者・求職者」は競合クリニックのことばかりを意識し、先生のクリニックのことを知らないままに受診先や就職先を決めてしまうケースも出てくるかもしれません。
“苦手意識”を持っていて今まで手が出せていない、という先生も、ぜひスタッフと協力をしながら活用を進めてみてはいかがでしょうか。
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著者:川本 浩史
船井総合研究所
提供:© Medical LIVES / シャープファイナンス