連日、暑い日が続きますが、涼を求めて、冷房の効いたお店にちょっと立ち寄る……そんな経験、誰にでもあるでしょう。そんなお店には、朝から晩まで過ごす、高齢者の姿が。そこから見えてきたのは、日本の高齢者を取り巻く、厳しい現状でした。みていきましょう。
年金14万円だが…70代老女「閉店までスーパーに入り浸り」35度酷暑でも「クーラー代をケチる」日本の高齢者、過酷な現実 (写真はイメージです/PIXTA)

朝から晩までスーパーのベンチに座り続け、手作り弁当までいただく老人の不思議

東京・郊外の大型スーパー。店舗の隅っこにあるベンチに、長時間、ただ座っている70代くらいの老女。

 

――毎日のことだから、気になって声をかけた

 

そう投稿したのは、スーパーで働く男性。

 

――家でクーラーをつけるなんて贅沢じゃない、だからここで涼ませてもらっているの

 

と老女の回答。外の気温は35度。家にいるときはとてもクーラーなしではいられないが、つけっぱなしはもったいない。仕方がなく、近くのスーパーでただ毎日を過ごしているといいます。

 

10時の開店とともに入店し、お昼ごろには手作りの弁当を広げ、閉店間際に自宅に帰る……それが毎日のルーティン。スーパーにいる間は特に何もすることなく、ほとんどベンチに座っているだけ。申し訳ないという気持ちからか、たまに買い物をして帰ることもあるのだとか。

 

総務省統計局『小売物価統計調査(2023年5月)』によると、電気代(従量電灯/最低料金制/441kWh)は全国平均1万1,446円。ロシアのウクライナ進行に伴う原油高などで、一時、1万5,000円を超えていましたが、国からの補助で今年2月に1万2,000円台に急落。ホッと胸をなでおろしているところですが、物価高は以前として続き、値上げのニュースは止まりません。

 

今年の夏は猛暑の予想。空調大手のダイキンの調査によると、夏場でもエアコンを使わない人が3割はいるといいます。その理由で最も多いのが「電気代がもったいないから」で、50.4%を占めています。家電製品の消費電力のうち、3割以上をエアコンが占めるといわれ、夏には使用頻度も高くなります。さらにこの物価高。「暮らしていくためにも、電気代を節約しないと……」。こう考える人が多くても当然でしょう。

 

しかし、室内でも熱中症になり、ときに死亡者まで出てしまうことは、よく知られた話。東京消防庁によると、昨年5~9月に熱中症で搬送された人は7万1,029人で、うち80人が亡くなりました。搬送された人のうち、高齢者は3万8,725人と過半数を占めています。