子どもが小学校高学年になると、中学受験が選択肢に入ってきます。中学受験をさせる場合は学習塾等の費用がかかり、それを家計でどうまかなっていくのかが重要な問題になります。何にどれくらいお金がかかるのか。費用を抑える方法はあるのか。そのほかにどんなことに留意すべきなのか。子どもにかかるお金に詳しいファイナンシャルプランナーの坂本綾子氏が著書『子どもにかかるお金の超基本』(河出書房新社)から、解説します。
塾代は年間100万円前後だが…中学受験の費用は「大学卒業までの10年間」まで考えて計画を立てるべき【FPが解説】 ※画像はイメージです/PIXTA

中学受験には年間100万円前後の「塾代」と「受験費用」がかかる

都市部では中学受験をする子どもの割合が高く、その場合、小学3年生の2月から塾に通うのが一般的。

 

[図表1]は、「令和3年度子供の学習費調査」(文部科学省)における小学生(高学年)の学年別の学校外活動費(年額)の内訳です。あくまでも平均値ですが、「学習塾費」が過半数と、大きな割合を占めることがわかります。

 

学校外活動費=補助学習費+その他の学校外活動費  「令和3年度子供の学習費調査」(文部科学省)より作成
[図表3]小学生(高学年)の学年別の学校外活動費の内訳(年額)「令和3年度子供の学習費調査」(文部科学省)より作成

 

中学受験をする場合、塾の費用は、選択する科目などによりますが、全国平均の調査データよりかなり高く、年間100万円前後が目安。通常の授業以外に、夏期講習や、直前特訓などを受けると追加の費用がかかり、学年が上がるにつれ高くなる傾向があります。

 

以下は、中学受験のために塾に通った場合の費用の例です。

 

【中学受験のために塾に通った場合の費用の例】

・入塾金:2万~3万円程度

・受講料:月2万円~8万円程度

・春期講習・夏期講習など:1回3万~20万円程度

 

なお、このほかに、関連する費用として、塾が徒歩圏内にない場合の交通費、文房具費や教材費、塾前後の飲食費等がかかります。

 

学習塾の費用は、教室形式か個別指導かなどにより塾ごとに異なります。

 

ここ数年増えているのが、パソコンやタブレットなどを使ったオンライン塾です。自宅で受けられて、費用も対面より安いのが特徴です。

 

塾に通わせる目的をはっきりさせた上で、費用はもちろん子どもに合うかどうかも考慮しましょう。保護者に得意な分野があれば、保護者が教えることも検討してください。

 

大学まで進学させる予定なら、大学入試の動向は要チェックです。1回の筆記試験で合否を決める一般選抜が減り、多面的に評価する総合型選抜などが増えています。勉強に明け暮れるよりも、むしろ、得意分野を伸ばし、様々な経験をすることが有利になるケースもあります。

 

次に、受験費用は、主に受験料と交通費がかかります。

 

【中学受験の受験料(1校あたり)】

・私立:2万~3万円程度

・国立:5,000円程度

・公立中高一貫校:2,000円程度

 

たとえば、私立を3校受けたら6万~9万円と交通費がかかるということです。

 

年間100万円で6年生まで通うと300万円です。受験の際には、滑り止めを含め受験する学校分の受験料も必要です。塾や受験の費用を、月々の収入や、その年の収入から出せることが、家計から見た中学受験の条件です。

受験後の10年間を予測して計画を

中学受験はゴールではありません。合格して国・公立より学費が高い私立に進学した場合、その後の大学が国・公立でも私立でも、大学卒業までの10年間は毎年かなりの教育費がかかり続けます。

 

大学の授業料は国・公立でも年間約54万円、私立はもっと高いところが多いからです。

 

目の前の中学受験のみならず、進学を希望する中学の授業料および、大学卒業までの教育費をざっくり計算した上で計画を立てましょう。

 

受験や合格後の費用を抑えるには、公立の中高一貫校を目指す、特待生を目指す、オンライン塾を活用するなどがあります。

 

【費用を抑える方法】

・公立の中高一貫校を目指し、合格できなければ地元の公立に進学する

・上位で合格できそうな学校から特待生制度(成績優秀者は入学金や授業料を免除)のある学校を選んで受験する

・対面形式の塾でなく、オンライン塾を利用する

 

進学先の校風が子どもに向いているか、子どもが望んでいるかという学校選びの基本に加えて、年間いくらまでなら出せるか、家計の状況も考えて無理のない選択をしましょう。

 

 

坂本 綾子

日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定CFP

1級ファイナンシャル・プランニング技能士

 

※イラスト作成:松岡 未来(ヤング荘)(『子どもにかかるお金の超基本』本文より)