高校生にかかる教育費は公立・私立などの進学先や学校外の活動によって異なっていきます。また、大学へ進学する際は塾や受験などさらに費用が掛かる場面があります。ファイナンシャルプランナーの坂本綾子氏が著書『子どもにかかるお金の超基本』(河出書房新社)から高校生にかかる教育費がいくらくらいになるのかということと、負担軽減のため活用したい「高校授業料の実質無償化」といわれる助成金の制度について解説します。
「高校生の教育費」は大学受験をさせるなら塾代だけで「年間100万円」かかることも…負担軽減のため活用したい「公的助成の制度」と利用できる条件【FPが解説】 ※画像はイメージです/PIXTA

大学受験の費用

◆意外とかかる受験の費用準備を忘れずに

大学を受験する際の費用は、国立か私立か、何校受験するかなどにより違ってきます。主なものは、願書の送料、受験票用の顔写真の撮影費、受験料(検定料)、受験当日の交通費など。自宅から遠い大学を受けるための宿泊費や、滑り止めの大学の入学金を払う家庭もあるでしょう。

 

受験料は、1校3万円〜3万5,000円程度([図表5]参照​)。受験費用の合計は30万円前後というデータも([図表6]参照​)。

 

[図表5]大学の受験料(検定料)

 

「令和3年度教育費負担の実態調査結果」(日本政策金融公庫)より作成
[図表6]大学受験の費用 「令和3年度教育費負担の実態調査結果」(日本政策金融公庫)より作成

 

私立大学の中には、複数の学部や方式を併願すると受験料を割引き、地方試験会場を設置するところも。受験予定の大学の入試制度と合わせて受験料も確認し、総額の予算を決めましょう。

 

高校生等への授業料の助成

◆高校生等には公立高校の授業料程度を助成

国立・公立・私立を問わず、高校、高等専修学校、高等専門学校などの生徒に、国が支給するのが「高等学校等就学支援金」です。「高校の学費の実質無償化」と呼ばれることがあります。

 

金額の目安は公立高校の授業料程度の月9,900円、年間では11万8,800円(学校の種類により異なる)。国からの交付金を使って実際に支給するのは都道府県です。都道府県ごとに申請方法や支給の時期は異なります。在学する学校からの案内に従って手続きを。

 

就学支援金は、生徒に代わって学校が受け取り授業料にあてます。学校によっては、先に授業料を払い、後で就学支援金相当額が還付される場合もあります。

 

◆収入の条件を満たせば私立にはさらに加算

公立より授業料が高い私立には、加算があります。全日制の私立高校の場合は、月3万3,000円、年額では39万6,000円。ただし、実際に払う授業料がこれより安ければ、授業料の額が上限。逆に高ければ、超える分は自己負担です([図表5]参照)。

 

「高等学校等就学支援金制度リーフレット」(文部科学省)より作成
[図表5]支給額のイメージ 「高等学校等就学支援金制度リーフレット」(文部科学省)より作成

 

高等学校等就学支援金は、日本に住む高校生等が対象で、全国で約8割の生徒が利用しているとか。世帯の年収に上限がありますが、比較的高めだからです。ただし、私立への加算は年収の条件が厳しくなります。住民税の課税標準額を基に判定され、計算式は以下の通り([図表6]参照)。

 

市町村民税の課税標準額×6%-市町村民税の調整控除の額

 

これにより算出された金額ごとの支給額は以下の通りです。

 

・15万4,500円未満⇒最大39万6,000円

・15万4,500円以上・30万4,200円未満⇒11万8,800円

 

「高等学校等就学支援金制度リーフレット」(文部科学省)より作成
[図表6]支給の対象になるかどうかの計算式 「高等学校等就学支援金制度リーフレット」(文部科学省)より作成

 

住民税の課税標準額は、同じ年収でも家族構成などにより違ってきます。会社員の場合、もらえるかどうかの目安は[図表7]を参照してください。入学時に申請し、その後は収入状況の届け出をします。

 

「所得基準に相当する目安年収」(文部科学省)より作成
[図表7]親が会社員の場合の年収の目安 「所得基準に相当する目安年収」(文部科学省)より作成

 

 

坂本 綾子

日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定CFP

1級ファイナンシャル・プランニング技能士

 

※イラスト作成:松岡 未来(ヤング荘)(『子どもにかかるお金の超基本』本文より)