つみたてNISAからの買い付け額は、制度開始から5年目にして3兆円を突破しました。ただ、内閣府の「資産所得倍増プラン」で掲げる総口座数3,400万の達成はまだまだ遠く、直近は口座開設数の増加ペースも鈍化している。本稿では、ニッセイ基礎研究所の前山裕亮氏が、つみたてNISAの口座数の推移を振り返りつつ、利用者増に向けた課題について解説します。
つみたてNISAの現状と示唆される新NISAへの課題 (写真はイメージです/PIXTA)

口座数増加は鈍化

つみたてNISA(少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度)は2023年3月末時点で783万口座(棒グラフ)となり、開設される口座数は着実に増えていることがうかがえる【図表1】。

 

しかし、口座の増加数は2022年第2四半期以降だと前年同期を下回り続けており、一時期の勢いはみられなくなっている【図表2】。

 

一般NISA(橙棒)を含めたNISA全体でみても、2022年第2四半期以降だと前年同期を下回っている。

 

単純に来年から始まる新NISAを前に様子見している人が多いだけかもしれないが、現行NISAの口座開設はやや一巡してきているように見受けられる。

 

このままいくと2023年の口座の増加数は2022年のつみたて207万口座、一般37万口座、合計244万口座を下回る見込みである。仮に毎年250万口座増えたとしても、5年で1,250万口座の増加で2022年末の1,800万口座と合わせても3,050万口座にしかならない。

 

やはり資産所得倍増プランで掲げられた3,400万口座を達成するためには、今まで以上にNISAの利用が広がることが求められる。

 

 

さらに未使用口座の割合は高止まり

その一方で、つみたてNISAからの買付額は口座数以上に伸びており、2023年3月末時点で制度開始からの累計の買付額は3兆2,396億円と、制度開始から5年目にしてついに3兆円を超えた。

 

買付額の伸びが顕著なのは、つみたてNISAの実際の利用度合い、1口座あたりの買付が増加基調であるためである。

 

2022年の1口座あたりの平均買付額は18万円と2021年の16万円から2万円増加した。買付がなかった口座を除外しても23万円から25万円に2万円増加していた【図表3】。

 

ついに実際に利用している人の平均買付額が24万円、つまり毎月2万円の大台を超えた。

 

買付額別の口座数をみても、年間20万円超の買付があった口座数(青棒)が2022年は311万口座と2021年の184万口座から127万口座と、買付額別に最も増加した【図表4】。

 

 

 

ただ、年間20万円超の買付があった口座ほどではないが、買付が一度もなかった、つまり未使用の口座(灰棒)も増えており、2022年は195万口座もあった。

 

全口座に対する割合は低下基調で2022年が27%と制度開始来で最低となったが、2021年が28%であったことを踏まえるとほぼ横ばいであった。2020年以降は状況があまり改善しておらず、新NISAでも口座開設したものの実際に買付を行うまでに至らない人に、いかにして始めてもらうかが課題となるだろう。