つみたてNISAからの買い付け額は、制度開始から5年目にして3兆円を突破しました。ただ、内閣府の「資産所得倍増プラン」で掲げる総口座数3,400万の達成はまだまだ遠く、直近は口座開設数の増加ペースも鈍化している。本稿では、ニッセイ基礎研究所の前山裕亮氏が、つみたてNISAの口座数の推移を振り返りつつ、利用者増に向けた課題について解説します。
つみたてNISAの現状と示唆される新NISAへの課題 (写真はイメージです/PIXTA)

始めたばかりの方は厳しい運用状況

また、つみたてNISA口座全体でみると2022年末に2018年末以来となる含み損に転落したようだ。

 

制度開始から累積の買付額、売却額、分配金と2022年末の残高を元にすると、つみたてNISA口座全体で43億円の含み損が出ている計算になる【図表5:右】。

 

含み損の金額は2022年末までの買付額2兆8,517億円と比べると極めて小さいが、2021年末時点にあった3,272億円の含み益は消し飛んだ。

 

 

制度開始来から2022年末までの買付額2兆8,517億円のうち、半分弱の1兆3,223億円は2022年中の買付であるため、どうしても足元の市場環境に影響されやすくなってしまっている面が確かにある。

 

すべての利用者が含み損を抱えているわけでは決してないと思われるが、2021年や2022年など始めて間もない人の中には2022年末時点で含み損を抱えている人もいると推察される。

 

長期投資を続けていると2022年、もしくはそれ以上に厳しい市場環境に直面することがあり、長期投資を続けるにはそのような厳しい状況を乗り越える必要がある。新NISAでは、始めてもらうかだけでなく、始めた後も、特に厳しい市場環境の時にいかにフォローアップするかもカギになるだろう。

 

幸いなことに2022年に売却はあまり出ておらず、積立投資を止めてしまう人は少なかったようだ。

 

つみたてNISA口座からの売却額(棒グラフ)は年々、増加しており2022年は945億売却されたが、これはあくまでも買付額や残高が急激に増加しているためである【図表6】。

 

実際に各年の売却額を前年末残高で割った売却率(線グラフ)をみると、年々、低下しており、2022年は5%であった。制度開示時と比べて、かなり長期投資が浸透し、また実行する人が増えていることがうかがえる。

 

ただし、NISA制度開始以降、2019年、2020年、2021年と良い市場環境が長かったこともあり、今後、厳しい市場環境が続いた場合には不安に耐えきれず売却してしまう人が増える可能性もある。

 

こうした不安になった利用者に対して、NISAを運営している金融機関などが、適宜適切なフォローアップして、安易に損切売却などせず、積立投資を継続してもらうかも新NISAでは重要になる。

 

最後に

足元のつみたてNISAの利用状況をみると、一人あたりの買付が増え、また売却も減っているなど利用している人は制度をより長期的かつ有効に活用しようとする様子がみられた。

 

その一方で口座数増加の鈍化や減らない未稼働口座など課題も残っていた。これらの現状を踏まえると、新NISAでは制度を利用する人と利用しない人、もしくは利用できない人とで、老後資金等の資産形成面における格差が今まで以上に広がることが懸念される。