小児科医の年収…勤務医と開業医で「約2,000万円」の差
他の科に比べ労働時間も長く、業務量も多い小児科医。では、赤裸々な話、小児科医の年収はどれくらいなのでしょうか。
医師の年収分布をみると、もっとも多い年収帯は1,000万円~1,500万円で全体の33.1%、次いで1,500万円~2,000万円が全体の28.4%を占めています。
小児科医の年収は、その働き方や立場により大きく異なりますが、一般的に病院に勤務する小児科医の平均年収は約1,220万円とされています。もちろん他の職業も含めた平均年収に比べると高額ですが、他の診療科目の医師と比べると低水準です。
一方、開業医となると話は違います。小児科の開業医の平均年収は約3,300万円と、勤務医に比べ約2,000万円高くなります。
ただし、開業医として成功するためには、それなりの開業資金や、子どもたちが喜んで来院するような設備投資など、多くの投資が必要です。また、小児科医は保険点数が低く、経済的な収益性は実は他の診療科と比較すると実はあまり高いとはいえません。そのため、地域のニーズに応じて内科を兼業することもあります。
さらに、小児科医としての仕事は、子どもだけでなくその親とのコミュニケーションも重要となります。特に「モンスターペアレント」などと呼ばれる、過度な要求をする親への対応も求められるケースがあります。そのため、高い精神力やコミュニケーション能力が必要となります。
以上のように、小児科医の年収は多くの要素によって左右されますが、子どもたちの笑顔や元気になった姿を見ることができるなど、やりがいの大きい仕事であることは間違いありません。
まとめ…小児科医は「割に合う職業」といえるのか?
ここまで見てきましたが、総合的に考えると小児科医は「割に合う」仕事といえるのでしょうか。
まず、経済的な観点からみると、小児科医の年収は他の診療科目と比較して中程度の水準であり、特に開業医となると年収は大幅に上昇します。ただし、開業のためには大きな投資やリスクをともないます。また、小児科医は保険点数が低く人件費率が高いため、経済的な収益性は必ずしも高いとはいえません。
そのため、コロナ禍においては経営がひっ迫した病院では小児科の閉鎖・休止が相次ぎました。筆者自身も20年勤め上げた勤務先の変更を余儀なくされました。
次に、労働環境の観点からみると、小児科医は非常に過酷な勤務状況に置かれることが多いです。特に新生児科医は24時間体制での勤務が求められることがあり、これは大きなストレスとなりえます。また、子どもだけでなくその親とのコミュニケーションも重要となり、特に過度な要求をする親への対応は精神的な負担となることがあります。
しかし、それらの困難さを乗り越えたときに得られる達成感や喜びは、他の仕事では得られないものです。そして、子どもたちの笑顔や元気になった姿を見ることができるのは、小児科医ならではの魅力であり、日々の活力となります。実際、年収は同程度でも、満足度は診療科別で見たときにトップクラスに高いというデータもあります。
他の診療科と比べると決して恵まれているわけではありませんが、子供たちの笑顔がなによりも活力となる「小児科医」。あの手この手で少しでも子供たちの笑顔が見られるよう、頼られるように努力しています。
みなさんも、お医者さんのことをあまり毛嫌いせずに、いつでも気軽に子どもの病気について相談してみてくださいね。
秋谷 進
東京西徳洲会病院小児医療センター
小児科医