内科医、整形外科医に次いで医師数の多い「小児科医」。子どもの健康を守るやりがいのある仕事ですが、他の診療科とは異なる「小児科医ならでは」の過酷な労働環境があると、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師はいいます。他の診療科目と比較しながら、“懐事情”を含めた小児科医の実態をみていきましょう。
勤務医と開業医で「2,000万円」の所得格差も…子どもの未来を守る「小児科医」驚きの給与額【現役小児科医が激白】 (※写真はイメージです/PIXTA)

医師数は多いが…過酷な労働環境に置かれる小児科医

医療施設に従事する医師のうち、小児科医は臨床研修医を除くと内科、整形外科に続いて3番目に医師数の多い診療科です。

 

出所:厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」より抜粋(2018年12月31日現在)
[図表1]医療施設に従事する医師数 出所:厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」より抜粋(2018年12月31日現在)

 

では、他の診療科と比較して労働環境や労働時間には違いがあるのでしょうか?

 

小児の急変は突然…長時間労働を余儀なくされる

小児科医の労働時間を調査した報告書によると、

 

●小児科医の1週間あたりの平均労働時間……約52時間
●小児科医で1週間あたり60時間以上働いている人の割合……約40%

 

といわれています。一般的な労働時間が8時間×5日=週40時間とすると、かなり長い労働時間であることがわかります。さらに、診療科全体の医師の労働時間平均(46.6時間)と比べても、約6時間長いです。また、60時間以上働いている人の割合も40%と、他の科の平均(27.9%)に比べ約13%も高い結果となっています。

 

小児の急変は突然ですし、親としても自分のことなら「様子を見よう」と判断できても、子どもの急変というとそうはいきません。また、日本は他国に比べ非常に安価な値段で診療を受けられるため、夜間でも子どもを病院に連れていきやすいというのも、労働時間が多くなりやすい原因のひとつであると考えられます。

 

分野を横断した知識が必須…業務量も多岐にわたる

小児科医というのは、子どもが生まれてから成長するまでの期間に発症したさまざまな病気を診断し、治療を行うのが仕事です。

 

そのため、先述したように子ども特有の病気だけでなく、さまざまな診療科の知識が求められます。実際、地方の病院は小児科医の人手不足が深刻化しており、1人の医師が外来と入院を同時に対応するケースもあり、非常に忙しい診療科目となっています。

 

また、ワクチン接種業務や、「疾患を予防するためにどうすればよいか」を保護者に対して正しく啓蒙することも求められるなど、小児科医の業務内容は非常に多岐にわたっています。

 

こうした労働環境が天国か地獄かは、小児科医本人の子どもに対する興味と気質に大きく左右されます。

 

小児科医は「開業」を検討する人が多い

ちなみに小児科は、キャリア形成の選択肢として、「大学病院や地方病院で専門を極める」ということのほかに「開業」を考えている人が多いです。

 

実際、開業を検討している小児科医の割合は9.8%と、平均である7.8%よりも高い傾向があります。しかし、開業するためには、開業のための資金はもちろん、経営者としての資質が求められます。開業がうまくいかなかった場合、赤字を抱える可能性もあります。

 

ただし、開業でうまくいった場合は激務な分、勤務医時代以上の収入が得られます。