奨学金延滞者「月1万円を返すのがギリギリ」が55.3%
日本学生支援機構『JASSO年報(令和3年度版)』によると、給付奨学金の奨学生は32万1,833人。一方、貸与奨学金の奨学生は第一種で47万3,376人、第二種で68万5,525人。圧倒的に貸与型奨学金が多くなっています。
また、奨学金を借りたはいいけど返済に苦労するケースは珍しくありません。なかには延滞している人も。日本学生支援機構『令和2年度 奨学⾦の返還者に関する属性調査』で、その実情をみていきましょう。
同調査は、令和2年12月末において、奨学金返還を3か月以上延滞している者(以下「延滞者」という。)から無作為抽出した15,785人。令和2年12月末において、奨学金返還を延滞していない者(以下「無延滞者」という。)から無作為抽出した9,440人を対象に行ったもの。延滞者の回答者は2,106人、無延滞者の回答者は2,020人。それによると、返還義務を知った時期は、無延滞者では「申込⼿続きを⾏う前」が88.9%であるのに対し、延滞者では52.2 %と約半数。
奨学金の返済が苦しいという人たち。延滞者に「月にどれくらいまでなら返すことができるか」と尋ねたところ、55.3%が「返せるのは月1万円未満」と回答。さらに年収別にみていくと、年収600万円以上でも21.7%が「返せるのは月1万円未満」と回答しています。
【延滞者×年収別「月1万円未満なら奨学金を返せる」回答者割合】
無収入:75.9%
~100万円:69.8%
~200万円:67.2%
~300万円:52.8%
~400万円:43.6%
~500万円:29.3%
~600万円:29.9%
600万円以上:21.7%
出所:日本学生支援機構『令和2年度 奨学⾦の返還者に関する属性調査』より
平均通りの賞与を手にするとすると、年収600万円であれば月収は40.4万円、手取りは30万~31万円程度だと推測されます。「それだけの収入があれば、月々1万円くらい、払えないのが不思議」と思うでしょう。住宅ローンに子どもの教育費、親の介護……人によって事情はさまざま。ただ月40万円稼いでも「月1万円も捻出できません」と悲鳴をあげている人が、意外にも多いというのが現実です。
返済義務のある奨学金の場合、「返せないなら返さなくてもいいよ」というわけにはいきません。日本学生支援機構の場合、月々の返還額を少なくする「減額返還制度」や、返還を待ってもらう「返還期限猶予」といった制度のほか、本人が死亡した場合や障がいにより働くことが難しくなった場合には「返還免除」の制度もあります。いずれにせよ、「返せない」と黙っているのは悪質。まずは、奨学金を受けた機関に相談することが、奨学金返済地獄から抜け出すための第一歩です。
【参考】
・JASSO年報(令和3年度版)
https://www.jasso.go.jp/about/organization/annual_report.html
・令和2年度 奨学金の返還者に関する属性調査
https://www.jasso.go.jp/statistics/shogakukin_henkan_zokusei/2020.html