米国(海外)での防犯テックの活用事例
1.Sound Thinking(米国)
まず紹介するのは、米国にあるSound Thinking※2です。同社は、主に警察機関に対してSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)を提供しています。同社が提供する「ShotSpotter」というサービスは、町中に音響センサーを張り巡らせておき、銃撃が起こった場所を1分以内に特定し警察に通報するというものです。
米国はご存知のとおり銃社会で、日常的に銃撃事件が起きており、そのうち8割は通報されないという実情があります。
その点、ShotSpotterを導入すれば発生件数全体の約9割がカバーできます。事件が可視化されることで警察が効率的に緊急対応を行ったり、犯罪抑止のための統計データを収集したりすることが可能になるのです。
また、捜査などにあたり、警察をはじめとする法執行機関が持つ大量の情報から必要なものを引き出して調査することは大変な労力がかかります。「CrimeTracer」というサービスでは、大量のデータベースから情報を呼び出して高度な分析を加えることができ、警察の人員不足を補い、業務をサポートする役割を果たしています。
2.Citizen(米国)
米国では、ニューヨーク発の「Citizen※3」というスタートアップ企業が、同名のモバイルアプリ(Android/iOS)を提供しています。このアプリをインストールしておけば、米国内の60の都市とエリアにおいて、「〇〇で発砲事件」「〇〇で火災が発生中」というように、リアルタイムで発生している事件・事故の通知が届き、マップ上で確認することができます。なお、ウェブ版※4も利用可能です。
情報源は、警察への通報や警察の無線通信をキャッチし、同社のオペレーターが確認したうえで発信しています。
さらに、現場に居合わせたユーザーによる報告も取り込んでいるのが特徴的です。ユーザーによる中継映像配信や動画・写真の投稿、コメントの書き込みもでき、まさに“Citizen(市民)”による集合知を活用したサービスといえます。
こうした一般市民の情報を活用できるようになった背景には、スマートフォンの普及があります。スマートフォンの登場以前は、情報をキャッチした報道機関の記者が現場に駆けつけ、撮影ののちニュースにパッケージ化したうえで初めて大衆の目に触れていました。しかし、いまやほぼすべての人が高性能なカメラを備えたスマートフォンを持ち歩いていることから、現場の情報が即座に流通するようになりました。
また、報道では時間枠や掲載スペースが限られているために、どうしても大きな事件・事故のみを報じざるをえません。報道では掬い取れない小さな事件・事故についてもカバーされることで、ユーザー1人ひとりにとってリアルタイムで必要な情報を手に入れることが可能です。