日中の暑さが和らぎ、涼しさを感じるようになると、おいしいと感じる食べ物にも変化が訪れます。その好例として思い浮かぶのが、チョコレート。毎年秋の時期になると新作チョコが登場し、目新しいビジュアルやフレーバーに心躍らせる人は多いことでしょう。実は今、チョコレートの世界にフードテックの波が到来。今の時代に寄り添うような、新しい発想や技術のチョコレートが誕生しているのです。一体どんなチョコなのでしょうか……。そこで今回は、国内外におけるチョコレートの新技術に注目し、それらの特長や画期的な製造技術についてわかりやすくご案内していきたいと思います。
チョコレートにフードテックの波あり。あたらしいおいしさや生産性を可能にする最新技術とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

 ※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

乳アレルギーでも食べられるアレルゲンフリーチョコレート

植物性原料、乳製品不使用、グルテンフリーにこだわったチョコレートブランド「ANY1 CHOCO」(提供:日本ハイドロパウテック)
植物性原料、乳製品不使用、グルテンフリーにこだわったチョコレートブランド「ANY1 CHOCO」(提供:日本ハイドロパウテック)

 

アレルギーのためにチョコレートを食べられないという話を聞いたことがあるでしょうか? これはあまり取り上げられない話かもしれませんが、実は乳アレルギーを持つ人は一般的なミルクチョコレートを食べることができません。また、従来のチョコレートの製造方法の多くはアレルギー対策を施すことに課題があり、産業上実現することが困難な状況と言われています。

 

そのブレイクスルーを作ったのが、新潟県に本社を置く日本ハイドロパウテック。同社は2014年に創業、化学薬品を一切用いることなく、極めて短時間で醸造物・発酵物を製造する加水分解技術(特許)を保有しています。たとえば、食物繊維や炭水化物やタンパク質などの分子結合を切断して、任意のレベルまで低分子化させた粉末、液体原料を製造することが可能に。そしてこの技術をチョコレート製造に応用することで生まれたのが、「ANY1 CHOCO(エニワンチョコ)」です。

 

これまで難しいとされてきた植物性原料だけでおいしいチョコレート製品を作る秘密は、新発明の独自技術にあります。そのポイントは2つ。

 

1つは、チョコレートの原料になるカカオニブを30分という超短時間で微細な粒子に加工できること。通常はカカオニブに衝撃を加えたり、ローラーで砕いたり、石臼の原理を用いた機械を用いるなどして1~2日を要する工程です。

 

そして2つ目は、カカオニブだけでなく他素材も10ミクロン程度に微粒化できること。これにより、12~72時間かかるとされるチョコレートの練り上げ作業(コンチング)を大幅に短縮できるようになりました。これらの結果として、カカオの風味を逃さすことなく、深みのある香り豊かなチョコレートを超短時間で作れることに成功したのです。

 

また牛乳の代わりに白インゲン豆ともち米玄米を使用し、これらを分子レベルまで分解することで、植物性ならではのクセを軽減させています。現在エニワンチョコは、日本でのオンライン販売とシンガポールでの店舗販売がはじまっています。