昨今、VRを使用したオンライン茶室や茶道のために開発されたロボットを通じて茶道に関心を持つ人が増えています。今回は、新たなテクノロジーと茶道を掛け合わせることによって生まれる可能性について解説します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
VR、AIロボット……テクノロジーで進化した「ネオ茶道」!伝統芸道の魅力を未来へ (※写真はイメージです/PIXTA)

伝統芸道と最新ITを融合

日本には、日本人ならではの美意識、わび・さびが表現された伝統芸道がたくさんあります。一方で、これまでそれらに「親しむ機会がなかった」という層には敷居が高く感じられてしまうこともあり、「一部かつ一定数の人たちによって親しまれる傾向にある」という課題を抱えていました。

 

しかし、近年は最新ITを組み合わせることで、これまで親しむ機会がなかった方でも気軽に体験し、実践的に学ぶきっかけが提供され、伝統芸道の魅力が再発見されています。

 

たとえば、歌舞伎・能などの伝統芸能や、華道・書道・茶道などの伝統芸道はさまざまな最先端テクノロジーと融合することで、普遍的な魅力を伝えるのみならず、新しい価値を生み出しています。なかでも、今回は茶道に焦点を当ててみましょう。

 

お茶を通じ、一期一会の交流を楽しむ茶道

茶道は茶の湯とも呼ばれ、「亭主が客人にお茶を振る舞い、客人はそのおもてなしを受け、お茶と茶菓子などを賞味する」という儀式のことです。現在の茶道の基礎は、安土桃山時代に活躍した茶人・千利休が確立しました。

 

亭主は客人をもてなすために心を込めてお茶を点てるだけでなく、茶室の手入れや茶道具の選定、床の間にかける掛け軸や飾られた花、季節に合った和菓子など、細部にまで気を配ります。

 

おもてなしを受ける客人もまた、いただき方、座り方など細かな作法を守ることで、互いに清々しい、お茶を通じた一期一会の交流が生まれます。

 

 

[図1](※写真はイメージです/PIXTA)

 

昨今は茶道人口が年々減少している一方、SNSで魅力を発信する人や日本の伝統文化に注目する外国人観光客は増加しており、新たな局面を迎えています。茶道と最新ITを融合する取り組みは、この新たな潮流を加速させる一助となっています。

 

茶道の可能性を広げる最新IT

最新のテクノロジーを取り入れることで、茶道の可能性はどのように広がったのでしょうか。実際の事例を紹介します。

 

VR(バーチャル・リアリティ)やオンラインで、自宅にいながら茶道を体験

「茶室という小さな空間を共有し、少ない人数で交流する」これは、茶道ならではの親密かつ心地よいコミュニケーションを可能にする特徴の一つですが、場所が限定されているため「参加や主催のハードルが高い」という課題がありました。

 

また、コロナ禍により、日常的に茶道を嗜んでいる層にも「茶会の参加を断念せざるを得ない」という状況に追い込まれました。

 

そこで、こうした問題を一挙に解決したのが、オンラインやVRで主催される茶会です。ネット環境さえあれば世界中どこにいてもアクセスすることができます。

 

たとえば、茶道初心者から茶道の先生まで、幅広い参加者から「茶の湯を茶室から、WEB空間へ拡張する」をコンセプトで親しまれているオンライン茶会「茶空会 sakue 」の内容を例に紹介します。

 

参加者の元には、事前にお菓子、抹茶、懐紙、などが入った「お茶セット」が届きます。自分で用意するものは、お湯とお茶碗、茶筅だけです。参加者全員で同じお菓子・同じ種類の抹茶を堪能し、同じ空間を共有せずとも、お茶会を楽しむことができます。

 

また、「茶空会 sakue 」でも人数限定のイベントとして開催されることのある、VR茶席が話題を読んでいます。

 

VRは没入感が高く、臨場感あふれる空間を楽しむことができます。清潔感がただよう茶室や、お茶を通して生まれる参加者同士の親近感など、茶会のエッセンスをしっかり感じることができるため「いきなりリアルなお茶会に行くのはちょっと緊張する」という人にもおすすめです。

 

 

[図2](※写真はイメージです/PIXTA)

 

また、近年は茶道の作法をオンラインで学ぶことができるオンライン稽古や、配信動画などもあります。動画であれば、自分で出来るようになるまで繰り返し視聴できるので、まずは一人でじっくり勉強したいという人にもぴったりです。