長年「世界でもっとも安全な国」といわれてきた日本。しかし近年、豪邸を狙った強盗事件が複数発生していることや、「闇バイト」による強盗や傷害などの犯罪のニュースを耳にすることも増え、“体感治安”は悪くなっています。とはいえ、少子高齢化が進み、こうした犯罪を抑止し治安を維持する人手は減少する一方です。そこで注目したいのが、「防犯テック」。テクノロジーを利用し、犯罪を予防するしくみが米国を中心に増えています。今回は、そんな「防犯テック」の実例や今後の課題についてみていきましょう。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
犯罪被害を防ぐ「予知防犯」まで!進化する世界の最新防犯テック…犯罪ゼロ社会への道のり (※写真はイメージです/PIXTA)

国内でも開発が進む防犯DX

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

1.Singular Perturbations(シンギュラーパータベーションズ)

防犯とテクノロジーの掛け合わせに大きな可能性を感じるなか、日本においても防犯テックに取り組むスタートアップ企業があります。株式会社SingularPerturbations※5は、「世界の悲しい経験を減らす」というビジョンのもと、犯罪を減らすためのソリューション開発を行っています。

 

同社は、過去の犯罪発生情報や人口統計、土地利用データ、天気などといったさまざまなデータに基づき、独自のアルゴリズムで犯罪予測を行う「CRIME NABI」というシステムを開発しました。

 

このシステムをベースに、犯罪が発生しやすいと予測された場所を重点的にパトロールするルートを策定できるアプリケーションソフトウェアが「Patrol Community」です。警官はこれにより、経験や勘に頼るのではなく、正確なデータに基づいた最適なパトロールを行うことが可能となります。

 

出典:株式会社Singular Perturbationsホームページ
[図表3]Patrol Communityの利用でパトロールの効果が上昇 出典:株式会社Singular Perturbationsホームページ

2.VAAK(バーク)

近年、防犯カメラによって犯罪を未然に防ぐ「予知防犯」のテクノロジーも進化しています。

 

従来の防犯カメラは、その存在自体に犯罪抑止効果が認められるものの、撮影後しばらく経ってから警察が捜査に使用したり、裁判において証拠として提出されたりということが多く、犯罪を“予防”する効果は限定的でした。また、多くのカメラを設置すればするほど、それを監視する人間の労力もかかるという課題もあります。

 

2017年設立のVAAK※6が提供する「VAAKEYE」は、撮影データ中の人間の関節の動きや手に持っている物体などをAIで検知し、犯罪行為はもちろん、不審な行動や禁止されている行動などを自動的に認識することができます。現在、さまざまな場所に大量の監視カメラが設定されていますが、監視カメラを人間がみるだけでは、異常が発生したことを覚知することは難しくなっています。

 

このAIを防犯カメラと一緒に活用することで、異常を漏れなく認識することができ、公共空間における子供の見守りや、店舗での万引き防止など、犯罪の予防・抑止に役立てることができるのです。

 

出典:株式会社VAAKホームページ
[図表4]「VAAKEYE」によるAI検知の様子 出典:株式会社VAAKホームページ