同期入社し、35歳で結婚したA夫妻。都内でマンションを購入し、子宝にも恵まれ、貯蓄はあまりできないものの、幸せな日々を送っていました。定年時には住宅ローンも払い終え、老後生活がはじまった矢先、妻に“異変”が……夫であるAさんは「破産」の2文字も覚悟しつつ、藁にもすがる思いでFP Office株式会社の宮本誠之FPを訪ねたのでした。宮本FPがAさんに提示した「4つの助言」をみていきましょう。
年金月29万円、住宅ローンなし「幸せな老後生活」のはずが…62歳・妻の異変に夫「もう破産するしか」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「4つの助言」を生かせば老後破綻は免れるものの…

筆者はAさんに、以下のようなアドバイスを行いました。

 

1.生活費の見直し

支出を見直し、必要な費用を最小限に抑えることが重要です。予算を見直し、節約の余地がある部分を特定し、無駄な出費を減らす努力をしましょう。

 

2.追加の収入源の検討

妻の介護のため、Aさんは仕事を辞めざるを得ない状況ですが、介護に費やす時間のなかで、月5万円~10万円でも副業やパートタイムの仕事を考え、追加の収入源を確保していけば、資産減少のペースが抑えられます。ただ、妻の介護の状況や、自身の健康状態など、「どれくらい・何歳まで働けるか」考慮することが必要です。

 

3.資産運用

当初使わないで済みそうな資産を、少し運用に回しましょう。奥様の保険加入は現状厳しいかもしれませんが、ご主人が先に亡くなってしまう可能性もあります。保険の形で備えておけば、かけた金額よりも多い保険金が得られる場合もあります。

 

安い保険料で掛け捨ての保障を持つことで、運用に回せる資産は多くなりますが、収入が少なくなっている時代にハイリスクの運用をすることは避けましょう。外貨建ての一時払い終身などの商品であれば、場合によっては状況に見合うものがあるかもしれません。

 

4.公的支援の利用

政府や地方自治体が提供する介護サービスや補助金制度など、公的な支援制度を活用することで、負担を軽減することができるかもしれません。地域の福祉事務所や老人福祉センターなどで相談し、利用可能な支援策を探してみましょう。

 

以上4点を見直すと、A家の老後の資産は以下のようになります。

 

出所:筆者作成
[図表3]FPが見直したあとの資産推移(20年間) 出所:筆者作成

 

なんとか枯渇しない水準まで来ましたが、貯蓄は毎年減少していくことに変わりはなく、また、仕事はいつまで続けられるのかという不安は尽きません。日々の生活を切り詰めなければならず、子どもや孫への支援はなかなか厳しそうです。

 

◆まとめ

今回のA夫妻のケースは、若いうちの貯蓄が進まず、元気であればなんとか年金収入で生活を進められるだろうと高をくくった夫婦が陥ってしまった悲劇です。

 

ファイナンシャルプランナー(FP)は、このような悲劇が起きないように、人生のキャッシュフローとリスクのマネジメントを日々お手伝いしています。

 

現在または将来の家計に不安を抱いている人は、数々の世帯から世の中の推移を肌で感じ取っているFPにアドバイスを得ることで、いまの立ち位置を理解し、これから先どうすべきかを冷静に考えることもおすすめです。

 

 

宮本 誠之

FP Office株式会社

ファイナンシャルプランナー