日本人にとって、性格診断や占いなどで目にすることの多い血液型。しかし、血液型はどのように決まるのかといった基本的な仕組みを含めて、詳しく理解している人はごくわずかでしょう。そこで、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師が、血液型が決まる仕組みに加えて、両親の血液型の組み合わせからどのように子どもの血液型が決まるのかについて解説します。
AB型の父とA型の母から「O型の子」が生まれるワケ【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

子どものABO血液型はどうやって決まる?

遺伝子というのは2本の染色体が1対になっているのですが、親から子どもへは1本ずつの染色体が引き継がれます(お父さんの2本の染色体のうち1本とお母さんの2本の染色体のうち1本という具合です)。

 

たとえばAB型のお父さんとBO型のお母さんから生まれた子供を考えて見ましょう。

 

お父さんにはA型遺伝子とB型遺伝子があり子どもはどちらか1本を受け継ぎます。

 

お母さんにはB型遺伝子とO型遺伝子がありこちらもどちらか1本を受け継ぎます。

 

たとえばお父さんからA型遺伝子、お母さんからB型遺伝子を受け継ぐと子供はAB型になるのです。

 

こどもがありえない血液型だった!と焦る前に

実は小児科では保育園の健康調査書などに「血液型」を記載する欄があることや、単純に知りたいという希望で血液型の検査をすることがあります。そのときにAB型の父親とA型の母親から本来は産まれるはずのないO型の子どもが生まれてきた……という事例があります。

 

前の説明に戻っていただければ、AB型の父とA型の母からはO型の子どもは生まれるはずありません。

 

しかし、ここで「このお子さんは、この両親からは生まれるはずがない!」と決めつけてしまうは早計です。

 

本章の冒頭で「通常」染色体1本に存在する血液型の遺伝子は1つです。と説明しましたが、これには例外があります。1本の染色体にA型遺伝子もB型遺伝子も両方存在するシスAB型という染色体が存在するのです。

 

シスABの染色体1本とO型遺伝子を含む染色体を持つ父親からO型遺伝子を受け継いだ場合、母親からもO型を引き継げばO型の子どもが誕生するということになるのです。

 

まとめ

今回はABO式血液型の基本と特殊な例を解説しました。以前は特殊な血液型がわかっていなかったため、ABO式血液型ではありえない親子関係が推測され、親子鑑定訴訟で誤った判決が出た事例がありました。

 

現在では、ABO式の血液型には特殊な例があること(ボンベイO型やシスAB型など)がよく知られています。そのため、裁判所は基本的に血液型に依拠して親子関係を判断することはなく、精度の高いDNA型をもとにした親子鑑定を求めるのです。

 

 

秋谷 進

東京西徳洲会病院小児医療センター

小児科医