正しいデータを根拠に保険を選ぶ
多くの方がその存在を信じていると思われる「がん家系」。ただそれを信じるにあたってなにか具体的なデータを根拠にしているかというと、そうではなく、なんとなくそう思い込んでしまっている節があります。
筆者は過去に10,000回以上の保険相談会に携わってまいりました。そのなかでがん家系という言葉を発する方とたくさんお会いしてきましたし、今回の寺田さんのように
・がん家系ではないからがん保険は不要
という声も直接聞いて、それに対して実際のところをお伝えしてきました。がん保険を始めとした保険に加入するということは、毎月の家計出費を増加させることになります。必要なものには当然出費をするべきですが、大切なことは合理的な判断をするために正しい根拠をもとに納得して判断することだと思います。
ここでは、がん家系の実態と寺田さんご夫妻におけるがんのリスクについて確認していきたいと思います。
がんの遺伝性は5~10%程度
世のなかに『がん家系』という言葉で浸透している、がんの遺伝性。国立がん研究センターによると、乳がんや大腸がんなど、いくつかのがんにおいて遺伝性が確認されており、それらは『遺伝性腫瘍』という言葉で分類されています。
ただし、がんの遺伝性が確認されているのは、がん全体における5~10%程度で、がんの発生原因として考えられるもののうち、最も大きいものが『生活習慣』といわれています。いわゆる喫煙、飲酒、運動不足などが代表的です。生活習慣以外の要因のひとつとして、感染も挙げられています。つまりがんは、生まれつきというよりも生まれたあとにその発生原因が生じる病気だといえます。
つまりがん家計というよりは、がんは誰にでも発生しうるものとして備えを考えておく必要があり、またがん家系でないからがんの心配はないと考えることはリスクが高いといえるかもしれません。
40歳では圧倒的に女性のほうが高リスク
がん家系とは別に、今回の寺田さんたちの年代におけるがんのリスクに関して重要なデータが2つあります。寺田さんは、夫ががん家系でがんのリスクが高いと思い込んでしまっていたのですが、寺田さんの年代におけるがんの罹患リスクはそれとはまったく逆の結果になっています。
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)によると、2019年の40~44歳の男女別がんの罹患率(人口10万人当たりの罹患数)は男性:123.6、女性:326.8となっており、男性に比べ女性のほうががんのリスクが2倍以上高いことがわかります。
そしてもうひとつですが、がんは老化とともにリスクが上がるといわれているので、どちらかというと60代以降の年代になってから発症リスクは上がります。ただ、今回寺田さんが診断を受けてしまった乳がんについては、40代で罹患リスクが急上昇し、その後60代までほぼ横ばいで推移するという特徴があります。
つまり寺田さんご夫妻の場合、夫の側にがん家系という要素があることを考慮したとしても、寺田さん自身のほうがリスクは高かった可能性があります。