日本企業の多くは定年を60歳に設定しています。年金の受給は原則として65歳からなので、それまでの間、再雇用で働く人が多くなっています。しかし、その際、たいていは給与が定年前と比べて減額されます。不合理な場合は争う手段もありますが、なかなかそうもいきません。実は、足りない分をある程度補う公的な給付金もあります。その制度「高年齢雇用継続基本給付金」について解説します。
「24時間戦ってきたのに…」60代ビジネスマン「定年後再雇用」で給料が“60%にダウン”も…知らないと損する「国からの給付金」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「高年齢雇用継続基本給付金」の受給額

高年齢雇用継続基本給付金は、いくら受け取れるのでしょうか。これには計算方法があります。また、支給限度額も設けられています。それぞれについて説明します。

 

◆計算方法

まず、計算方法です。

 

60歳時の給料の月額と比べ、支給対象月に支払われた給料が何%まで低下したかを示す「低下率」を算出し、それを基に、所定の計算式によって計算されます。

 

まず、「低下率」は以下の通りです。

 

【低下率の計算式】

「支給対象月に支払われた給料の額」÷「60歳時の給料の月額」×100(%)

 

なお、「60歳時の給料の月額」は、原則として、最後の6ヵ月間の平均賃金をさします。

 

また、「支給対象月に支払われた給料の額」には「みなし賃金」も含みます。

 

「みなし賃金」は、以下の事由で給料が減額になった場合に、その減額分については賃金として支払われたとみなすものです。

 

【みなし賃金に該当するもの】

1. 被保険者本人の非行等による懲戒が原因である賃金の減額

2. 疾病又は負傷等による欠勤、遅刻、早退等による賃金の減額

3. 事業所の休業

4. 妊娠、出産、育児、介護等による欠勤、遅刻、早退等による賃金の減額

 

これらの場合は、本人に落度があるか、あるいは別の制度でカバーされるので、雇用保険による給付の対象外と判断されるのです。

 

こうして算出された「低下率」をもとに、次に、以下の計算式によって、給付金額を算出します。

 

【高年齢雇用継続基本給付金の給付額の計算式】

イ)低下率が61%以下の場合

 「支給対象月に支払われた給料の額」×15%

ロ)低下率が61%超・75%未満の場合

 -183/280×「支給対象月に支払われた給料の額」+137.25/280×「60歳時の給料の月額」

 

たとえば、もともと給料が月30万円だったのが、20万円に減額された場合、

 

低下率は

 

20万円÷30万円=66.67%

 

です。

 

これは61%を超えているので、支給額は

 

-183/280×20万円+137.25/280×30万円=16,340円

 

となります。

 

減額後の給料と合わせると、21万6,340円となります。

 

◆「最低限度額」と「最高限度額」

ただし、支給額には「最低限度額」と「最高限度額」があります。

 

最低限度額を超えない場合は、高年齢雇用継続給付は支給されません。また、最高限度額を超えると、超過部分は支給されません。

 

最低限度額、最高限度額は、「毎月勤労統計」の平均定期給与額により毎年8月1日に改定されます。

 

2022年8月1日~2023年7月31日の期間においては、最低限度額は2,125円、最高限度額は364,595円です(厚生労働省資料参照)。

 

◆「支給率」の早見表

以上を前提として、「低下率」ごとに、減額後の給料の何%を高年齢雇用継続基本給付金としてもらえるかという「支給率」の早見表を作成すると、【図表4】のようになります。

 

厚生労働省HP参照
【図表4】支給率早見表 厚生労働省HP参照