日本企業の多くは定年を60歳に設定しています。年金の受給は原則として65歳からなので、それまでの間、再雇用で働く人が多くなっています。しかし、その際、たいていは給与が定年前と比べて減額されます。不合理な場合は争う手段もありますが、なかなかそうもいきません。実は、足りない分をある程度補う公的な給付金もあります。その制度「高年齢雇用継続基本給付金」について解説します。
「24時間戦ってきたのに…」60代ビジネスマン「定年後再雇用」で給料が“60%にダウン”も…知らないと損する「国からの給付金」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「高年齢雇用継続基本給付金」を受給する手続き

高年齢雇用継続基本給付金を受給するには、原則として2ヵ月に1回、事業所を管轄するハローワークへの申請が必要です。この申請は事業主を介して行う必要があります。

 

初回の手続きは以下の通りです。

 

【高年齢雇用継続基本給付金の受給手続き(初回)】

1. (本人→事業主)受給資格確認票・支給申請書の記入・提出

2. (事業主→ハローワーク)受給資格確認票・支給申請書・賃金証明書の提出

3. (ハローワーク→事業主)受給資格確認通知書・支給決定通知書・2回目分支給申請書交付

4. (事業主→本人)受給資格確認通知書・支給決定通知書・2回目分支給申請書交付

5. (ハローワーク→本人)給付金の支給(口座振込)

 

なお、2回目以降は、受給資格確認の手続きは不要です。

 

高年齢雇用継続基本給付金を受給しながら老齢厚生年金を受給する場合の注意点

最後に、高年齢雇用継続基本給付金を受給しながら老齢厚生年金を受給する場合の注意点について、お伝えしておきます。

 

老齢厚生年金は基本的には65歳から受給するものですが、60歳から受給するケースがあります。以下の2つです。

 

【老齢厚生年金を60歳から受給するケース】

・繰り上げ受給

特別受給の老齢厚生年金

 

これらの場合は、高年齢雇用継続基本給付金を受給すると、以下の通り、給料の「低下率」に応じて、老齢厚生年金の受給額が減額されます。

 

・給料の低下率61%以下:老齢厚生年金が6%減額

・給料の低下率61%超~75%未満:老齢厚生年金が5.48%~0.35%減額

 

なお、この場合の「低下率」は、実際の減額後の給料ではなく、「標準報酬月額」を使って以下の式で算出される額とします。

 

「減額後の給料の標準報酬月額」÷「60歳時の給料の月額」×100(%)

 

これは、働きながら老齢厚生年金を受け取るのであれば、収入減はそれである程度カバーできるでしょ、ということです。

 

釈然としないものがありますが、制度上はこのような受給調整が行われるということです。

 

特別支給の老齢厚生年金はともかく、繰り上げ受給を選ぶ場合、年金の額が下がるうえ、高年齢雇用継続基本給付金を受給すると、そこからさらに年金が減額されます。それならば、可能な限り繰り上げ受給は避け、年金の受給開始は65歳にして、給料の減額分はこういう公的制度等でカバーするほうがいいといえます。