「睡眠不足は認知症の一因になる」と判明…世界一「寝不足」な国、日本への警鐘

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森田 麻里子
「睡眠不足は認知症の一因になる」と判明…世界一「寝不足」な国、日本への警鐘
(※画像はイメージです/PIXTA)

睡眠不足が健康に悪影響を及ぼすことは、いうまでもありません。最近の研究では、睡眠不足そのものが認知症の一因となることがわかってきました。日本人の睡眠事情を踏まえたうえで、睡眠不足が脳や身体に及ぼす様々な悪影響や、睡眠不足を解消し、良質な睡眠をとるためのポイントを見ていきましょう。森田麻里子医師が解説します。

日本は世界一「寝不足」な国

(※画像はイメージです/PIXTA)
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日本人は世界一「寝不足」。そんな調査結果があるのをご存じでしょうか。OECDのデータによると、日本人の睡眠時間の平均は7時間22分で、OECD加盟国の中で最下位となっています。日本と韓国以外はほぼすべての国で平均8時間以上となっており、中国や南アフリカは9時間を超えています。

 

そもそも、大人はどのくらいの睡眠時間が必要なのでしょうか。実は、米国国立睡眠財団の発表する推奨睡眠時間は、18〜64歳の成人で7〜9時間、65歳以上で7〜8時間となっています。

 

しかし令和3年度 健康実態調査結果(厚生労働省)によると、日本人では6〜7時間の睡眠が34.7%と一番多く、58%以上の人が7時間未満の睡眠時間しかとれていません。

 

「睡眠時間は6時間確保するのが限界、7時間以上なんて無理」と思われる方も多いでしょう。

 

確かに、そんなに眠らなくても日常生活は不自由なく送れることが多いです。しかし睡眠不足の怖さは、自覚がないうちに身体への悪影響が出てくることなのです。

「睡眠不足は認知症の一因になる」と判明

(※画像はイメージです/PIXTA)
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睡眠不足は、以下のように、人間の脳や身体に様々な悪影響を及ぼします。

 

・肥満のリスク上昇

・生活習慣病のリスク上昇

・免疫力の低下

・メンタルヘルスの悪化

・注意力、集中力等の低下

・記憶の定着が悪くなる 等

 

例えば、思考力・判断力などの認知機能は、睡眠不足によってすぐに低下する機能です。6時間睡眠を2週間続けると、2晩徹夜したのと同じ程度まで認知機能が低下するという研究もあります。

 

2晩徹夜した状態で仕事をしているなら、まずぐっすり寝てから仕事に取りかかったほうが、仕事も早く終わりそうですよね。6時間睡眠を続けているという人は、知らないうちにそれと同じ状態になっているのです。

 

また、睡眠不足と認知症の関係も注目されています。

 

認知症になると睡眠パターンの変化が起こり、睡眠時間が短くなることは以前から知られていました。しかし最近の研究では、睡眠不足そのものが認知症の一因となることがわかってきたのです。

 

アメリカ・ハーバード大学から2021年に発表された論文(*1)によると、65歳以上の高齢者2,812人のデータを用いて認知症の発症リスクについて調査したところ、睡眠時間が5時間以下だと、睡眠時間が7〜8時間の人と比較してリスクが約2倍になることがわかりました。また、寝つきにかかる時間が30分以上だと、15分未満の人と比較してリスクが約1.5倍となることもわかりました。

 

また、同じく2021年にパリ大学から発表された論文(*2)では、7,959人を50歳時点から25年間にわたって追跡したイギリスのデータが解析されています。それによると、50歳・60歳時点で睡眠時間が6時間以下だった人は、7時間睡眠の人よりも認知症のリスクが高く、特に50歳〜70歳にかけて持続的に6時間以下の睡眠時間だった人は、認知症のリスクがおよそ30%高くなることが示されました。

 

認知症の中でも、特に睡眠不足との関連が指摘されているのはアルツハイマー型認知症です。アルツハイマー型認知症の原因はまだはっきりとはわかっていませんが、アミロイドβというタンパク質が脳内に沈着して発症するというのが有力な説のひとつです。

 

睡眠不足になると体内や脳で炎症が起こり、アミロイドβが蓄積しやすくなるのではないかと考えられています。また、アミロイドβは寝ている間に排出されるので、起きている時間が長いことで排出されにくくなるという説もあります。

 

研究でも、高齢になってからの睡眠だけではなく、50歳時点での睡眠が認知症発症に影響することが示されています。まだはっきりわかっていないものの、アルツハイマー型認知症の発症のしくみを考えると、若いうちから睡眠を十分とることで認知症発症のリスクを下げられる可能性がありそうです。

 

今のパフォーマンスのためにも、将来の自分の脳や身体のためにも、十分な睡眠を確保することは非常に大切なことなのです。

睡眠不足を解消するには?

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

では、忙しい現代人ができるだけ良い睡眠をとるためには、どのようにすれば良いのでしょうか。

 

まず、「忙しくて寝るのが遅くなってしまう」という方は習慣の改善が必要です。夜の睡眠時間は少なくとも7時間が目安です。どんなに質の良い睡眠をとったとしても、現在のところ、必要な睡眠時間自体を極端に短くすることはできないと考えられています。

 

短い睡眠時間でも問題なく生活できるショートスリーパーという人も存在しますが、これは遺伝的なもので数も非常に少なく、1%未満ともいわれています。その日のやりたいことをすべてやって残りの時間で睡眠を取るのではなく、24時間から睡眠時間を引いて、残りの時間をどう使うか考える、という発想の転換が必要なのです。

 

そのうえで、せっかく寝るのなら、少しでも質の良い睡眠を取ったほうがいいのは間違いありません。ここからは、質の良い睡眠を取るために心がけたいポイントを解説していきます。

 

●寝る90分ほど前の入浴

38〜40度程度のぬるめのお湯に10〜20分間浸かりましょう。ぬるめのお湯につかることで、効果的に体温を上げることができ、また末梢の血管が広がって血行が良くなります。すると入浴後、上がった体温がぐっと急激に下がっていき、それによって寝つきがよくなります。

 

●寝る前のルーティーンを決める

入浴後、就寝までにやることを決めて、同じ流れのルーティーンとして毎日行うようにしましょう。カフェインフリーのお茶を飲む、読書、ストレッチ、瞑想など、ゆったりとリラックスできることをするのがおすすめです。毎日同じ流れで同じ行動をしてベッドに入ることによって、寝つきやすくなります。

 

●寝る前のスマホはやめる

就寝の1時間ほど前からはスマホ等の視聴はやめ、寝室にもスマホは持ち込まないようにしましょう。寝る直前までスマホを観ていたり、観ながら寝落ちしたりする方も多いのですが、これは睡眠の質が悪くなる大きな原因となります。

 

●寝る前のカフェイン、アルコールは避ける

カフェインは眠気を抑える作用があり、体内に入って代謝されても、半分の量になるまで8時間ほどかかります。寝る前の摂取を避けるのはもちろん、寝つきが悪い方は午後になったらカフェインを避けるようにしましょう。また、寝酒をすると寝つきが良くなると感じますが、アルコールは睡眠を浅くし、夜中に起きる原因になります。寝つきが良くなったとしても、睡眠の質としてはかなり低下してしまうのです。寝る4時間ほど前からはアルコールも避けましょう。

 

また、どうしても短い睡眠しかとれなかった場合は、日中に仮眠をすることで、集中力等の低下をある程度防ぐことができます。

 

●昼寝は10〜20分程度

生理的に眠気が高まる12〜14時頃に昼寝をするのがおすすめです。寝すぎると、寝起きに頭がぼーっとしてしまうことがあるため、目覚ましをかけて20分程度で起きられるようにしましょう。昼寝に入る前にカフェインを摂取しておくと、起きる頃に効果が現れてきて、スッキリと目覚めやすくなります。

 

また、眠ろうと思ってベッドに入るのになかなか眠れず、寝つきに時間がかかってしまうという場合もあります。そのせいで日中の眠気などがあり、日常生活に支障が出ているようであれば、睡眠不足というより不眠の問題になってきます。そのような場合に注意することをご紹介しましょう。

 

●眠くなってからベッドに入る

寝つきに時間がかかるから、まだ眠くなくても早くベッドに入るという方も多いのですが、そうすると余計に眠れず、「ベッドに入ってもなかなか眠れない」という不安からますます寝つきが悪くなってしまうことがあります。

 

質の良い睡眠を取るためのポイントを実践したうえで、しっかり眠くなってからベッドに入ることが大切です。最初は就寝時間が遅くなり、睡眠不足で眠くなってしまいますが、その眠気によって、だんだんと早い時間に眠れるようになるのです。

 

睡眠不足の状態を続けていると、将来の認知症などにつながる可能性があります。睡眠不足を解消することは、将来の健康への投資です。まずはできそうなところから、ひとつずつ、睡眠習慣を改善していきましょう。

 

【*参考文献】

1)Robbins R, Quan SF, Weaver MD, et al. Examining sleep deficiency and disturbance and their risk for incident dementia and all-cause mortality in older adults across 5 years in the United States. Aging (Albany NY). 2021;13(3):3254-3268. 

 

2)Sabia, S., Fayosse, A., Dumurgier, J. et al. Association of sleep duration in middle and old age with incidence of dementia. Nat Commun 12, 2289 (2021).

 

 

森田 麻里子

Child Health Laboratory 代表、医師

 

東京大学医学部医学科卒。麻酔科医として勤務後、2017年の第一子出産をきっかけに2018年より子どもの睡眠の専門家として活動。2019年昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤勤務を経て、現在はカウンセリングや育児支援者・医療従事者向け講座、企業と連携したアプリ開発、コンサルタント育成など行う。 著書:『医者が教える赤ちゃん快眠メソッド』(ダイヤモンド社)、『東大医学部卒ママ医師が伝える科学的に正しい子育て』(光文社新書)、『子育てで眠れないあなたに』(KADOKAWA)

 

 

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本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。