本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。今回は、近年多発する災害と共生していく私たちが、身を守る手段として今後欠かせないものとなってくる「オルタナティブ・データ」について、その活用事例とともにわかりやすく解説します。
劇的に被害を減らす…テクノロジーの進化による災害の「見える化」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「防災」の世界でオルタナティブ・データはどのように活用される?

防災の世界では、どのような情報が「オルタナティブ・データ」として活用されるのでしょうか?

 

たとえば冒頭の、いつどこに何人が滞在しているのかを把握できる「人流データ」です。人流データは、スマートフォンの通信事業者が、何人のユーザーが各基地局のエリア内にいるかという情報を収集し、匿名化することで作成されるデータです。スマートフォンのナビゲーションアプリや行動履歴を記録できるライフログアプリなどから収集することでも取得できます。

 

このデータを活用することで、災害が発生した際には人々の動きを把握し、避難ルートを選定、安全な誘導を実現させることができます。

 

首都直下型地震が発生すると、多くの帰宅困難者が発生してしまうことが危惧されています。どのエリアに何人が取り残されており、どこに援助物資を届ければいいのか、どの方面であれば被害が少なく、徒歩帰宅を促してよいのか……こうした判断の正確性は、行政や企業にとって大きな課題です。人流データの活用で人の流れを可視化することにより、適切な意思決定を行うことができるようになるのです。

 

また、冒頭で紹介した「売上予測に活用される人工衛星」から得られるデータも、防災に活用し得る重要なオルタナティブ・データです。通常のカメラと同じく可視光を計測する「光学センサー」、対象物の温度を測る「熱赤外センサー」、電波の反射を捉えるため夜や悪天候時でも観測が可能な「SARセンサー」など多様なセンサーによって宇宙から地球を24時間俯瞰し、被災状況を可視化します。

 

打ち上げコストが劇的に下がったことによって、2030年には年間4,000基以上が打ち上げられると予想されており、より広い範囲をカバーすることができるはずです。

 

そのほかにもTwitterやFacebookといったSNSに投稿される情報や、ドローンから得られる画像なども防災目的での活用が今後進んでいくでしょう。