IoTの時代を迎えて…「データ」が自然災害から人々を救う
今後、より多くのオルタナティブ・データが活用できるようになると考えられています。その背景にあるのはIoTの普及です。
IoTとはInternet of Things、つまり「モノのインターネット」を意味します。インターネットは、元来サーバやデスクトップコンピュータをネットワークで接続するためのものでした。
しかし、現在ではノートPC、スマートフォンやタブレット端末に留まらず、テレビや白物家電、デジタル情報家電、監視カメラ、各種センサー類もインターネットにつながるようになってきています。ネット接続のためのIoTデバイスが小さく、コストも安くなることで、今後もどんどん多様な機器がつながっていくでしょう。また、5Gの通信技術によりデータをリアルタイムに取得し、活用できるようになります。
沢山のモノがインターネットにつながることによって、なにができるようになるのでしょうか。それは「現実世界からより多くのデータを取得すること」です。たとえば、防災の世界においては、インターネットにつながる「IoT水位計」が登場しています。リアルタイムに河川の水位の情報を得ることができれば、川の氾濫リスクの高まりをタイムラグ無しに知ることができるようになるでしょう。
ひとつ活用例を挙げると、スマート信号を設置したセンサーで自動車や人間の動きを感知。そのデータをサーバに送り、信号の変わるタイミングを最適化する計算をしたあとで信号機に指示を戻す……というような使い方で、渋滞の解消につなげる活用方法が考えられます。
また、今後自動運転やスマートシティが実装段階に入っていくにつれ、街には「スマートポールやスマート信号」と呼ばれる設備が設置されていくと考えられています。これらは、街灯や信号機にAI搭載カメラ・5G基地局・公衆Wi-Fi・各種センサーを組み込んだもので、自動運転車と通信して運転支援をしたり、防犯を目的にカメラ画像を解析したりと、都市生活を効率化するために必要な設備です。
こうした世界中に設置されたデバイスからデータを取得することができるようになれば、災害時にもこれまで以上に被災状況の把握をリアルタイムに、そして網羅的に行うことができるようになるはずです。また、そうしたデータを解析し、今後の災害の発生を予測することができるようになれば、人命や財産の損失を劇的に減らすことができる可能性があります。
ChatGPTを始めとするAIチャットボットが話題となり、「仕事を奪われるのでは」という懸念も上がっています。しかし、真に創造的な仕事は人間にしかできないことです。情報処理はAIに任せ、これまで活用されていなかったオルタナティブ・データをどうすれば社会のために活用できるか、考えを巡らせてみるのも楽しいかもしれません。
根来 諭
株式会社Spectee
取締役COO