32歳のAさん。3年間付き合っている彼女とは順調で、彼女の両親への挨拶も済ませ、まさに「結婚間近」です。しかしある日、彼女の父親がAさんの「奨学金」を理由に結婚を渋っていると聞かされます。Aさんはどうすれば彼女と結婚することができるのでしょうか。FP1級の川淵ゆかり氏がAさんの事例とともに、奨学金を借りる際の注意点とリスクについて解説します。
娘とは結婚させられない…手取り23万円・32歳会社員、結婚目前の彼女の父が大反対した「奨学金の返済額」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

安易に借りてはいけない…奨学金で抱える「リスク」

筆者は、「奨学金は住宅ローンに似ている」と思っています。どちらも低金利で借りられるため「お得感」があり、なかには「借りなきゃ損!」と思う人もいるようです。しかし、どちらも「借金」であることに違いはありません。1度借りてしまうと、10年以上にわたって返済に苦しむことになります。


結婚後は住宅ローンを検討する人が多いですが、奨学金の返済状況等は住宅ローンの借り入れ可能額に影響します。したがって、「希望の金額を借りられなかった」というケースもあります。さらに、やっと大学を卒業できたとしても、「非正規職しか就けなかった」「正社員になれたが返済期間中に退職してしまった」等、返済が滞ってしまう状況に陥ることもあります。

 

教育ローンの場合は親が契約者となりますが、奨学金は子ども自身が契約者となります。お子さんに借金を背負わせることになりますので、検討する際は慎重になるべきです。「親は住宅ローンで苦しみ、子は奨学金で苦しむ」というのは、FPとして見ていて辛いものがあります。
 

また、奨学金の延滞が3ヵ月以上あると「個人信用情報機関」に個人情報が登録されますから、滞納履歴があることで将来的にローンが組めなかったり、クレジットカードが作れなかったり、といった悪影響が出てきます。

 

返済が難しくなった場合は、救済措置(返還期限猶予や減額返還など)がありますので、早めに相談するようにしましょう。

 

「自己破産」しても奨学金からは逃げられない

「自己破産すれば奨学金の返済を免れる」と思うかもしれませんが、そうはいきません。奨学金は契約の際、「連帯保証人(原則として父母)」と「保証人(原則として4親等以内の親族で本人および連帯保証人と別生計の人)」が必要ですが、本人が自己破産した場合、この連帯保証人や保証人に催促がおよびます。

 

つまり、本人が延滞した場合は連帯保証人に請求がいき、本人・連帯保証人ともに返還が困難な場合は保証人に請求がいくのです。場合によっては、奨学金延滞によって親戚関係が壊れてしまうことも考えられます。

 

保証人を立てずに保証料を払うことで利用できる「機関保障制度」というものもありますが、代わりに返済してもらったとしても最終的には請求を受け、支払う必要があります。