実際、いくら増える? 繰り下げ受給シミュレーション
それでは、現在57歳のAさんが、[図表3]の4つのパターンでそれぞれ年金を受給するシミュレーションをしてみましょう。
Aさんは大学卒業後就職した会社に現在も勤め、厚生年金に加入しています。また、同い年で専業主婦の奥さんと生活しています。60歳で定年退職する予定で、退職時の年収は600万円です。
それぞれ、年金の総受給額は[図表4]のように推移します。
安易な選択は要注意!注意すべき受給開始のタイミング
[図表3、4]のように、年金の受給を繰り下げれば、受給総額は増加します。しかし、繰り下げしたい場合には、受給する年齢までの生活が成り立つ資産を準備しておくことが重要です。
この資産準備の際には、誰の手も借りず自立した生活ができる「健康寿命」や、いまから何年生きられるかといった「平均余命」を参考にすると良いでしょう。[図表5]は、日本人のおおよその健康寿命と平均寿命、また先述した57歳のAさん夫婦を例にした平均余命を、図表にしたものです。
Aさん夫婦の場合、65歳からともに年金を受給すれば月額23万8,200円(※9)と、[前掲図表1]の平均的な生活を送ることはできるでしょう。しかし統計上、高齢になってから、奥さんが単身で生活をすることも考えられます。
したがって、なにも対策せず、単に年金受給の開始年齢を繰り下げることは危険です。その人らしい充実した老後生活を送るために「健康とのバランス」を考慮し、QOL(Quality of Life:生活の質)を維持できるような年金の受給年齢を選択することが大切です。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
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【参考】
※1 (公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査(速報版)」より
※2 総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2021年平均結果の概要」より
※3 増額率は最大で84%。ただし昭和27年4月1日以前生まれの方は、繰り下げの上限年齢が70歳、増額率は最大で42%。増額率は、66歳以降の繰り下げ受給を希望して手続きをしたときに決まる。たとえば、68歳から繰り上げ受給したいなら、68歳になって繰り下げ受給の手続きをした時点の増額率になる。
※4 「年金の繰り下げ受給」(日本年金機構HP)
※5 年金受給額は、退職時の年収から老齢厚生年金114万2,600円+老齢基礎年金71万9,500円=186万2,100円とした。
※6 73歳で「5年前みなし繰り下げ制度」を利用。受給する年金の増額率は、68歳0ヵ月からとして25.2%。
※7 厚生労働省「令和元年簡易生命表の概況」より
※8 厚生労働省「令和3年簡易生命表」より
※9 奥さんの年金受給額を99万6,300円(月額8万3,025円)と仮定して、Aさんの受給額と合算した。
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