成年年齢が18歳に引き下げられ約半年…高校3年生へ金融教育授業を実施
2022年9月、神奈川県の私立高等学校3年生120名を対象に、投資詐欺をテーマとした金融教育の授業を行いました。
2022年4月1日から成年年齢が20歳から18 歳に引き下げられたことで、親の同意なしでの契約が可能となったことにより、携帯電話の購入やクレジットカードの作成、返済能力が認められるとローンを組んで自動車を購入することができます。自分の意思でさまざまな契約をすることができる一方で、悪徳商法などによる消費者被害の拡大が懸念されます。
そこで、教職員の方からの要望を受け、投資詐欺から身を守るにはどうすべきかについて1時間の授業を行いました。
5年前にタイムスリップした設定で、投資シミュレーション
授業の冒頭では、なぜ資産形成が必要だと言われているのかをクイズ形式で考え、その後、投資について学習しました。投資によって、投資金額が増減する理由を理解した後、株式投資のシミュレーションを行いました。
私が投資のテーマで授業を実施する際、株式投資のシミュレーションを行うことが多いのですが、今回は株価のボラティリティが高かった上場企業を4社選定し、リスクとリターンの関係性を分かりやすくする工夫をしましました。生徒に対し、5年前にタイムスリップした設定で、「上場企業4社のなかからあなたの100万円を、どの企業に投資しますか?」と問いかけ、生徒にワークシート上で予想させました。
企業の名前を知っている生徒は、その企業に投資をする傾向にあった一方、企業の名前は知らないが「AI」「NFT」といった時流に乗ったビジネスを手がける企業に投資をする生徒も非常に多く見られました。結果として、株価チャートを見せることで、高いリターンを得るためには大きな損失をする可能性があることがわかり、「リスクとリターンの関係性」について理解を深めることができました。
高校生「絶対に儲かる話はない」を実感
そして、投資詐欺について考えます。まずは株価チャートを用いてリスクとリターンについて考えたのち、リスク・リターンの2軸をマトリクスで表すことで、「ローリスク・ローリターン」「ミドルリスク・ミドルリターン」「ハイリスク・ハイリターン」は金融商品として存在するが、「ローリスク・ハイリターン」の商品は存在せず、それは美味しい話であることを示します。
さらに、美味しい話の例として、集めたお金を配当金と偽り、横流しする「ポンジスキーム」について実際の投資詐欺の事例とともに紹介しました。最後に、投資詐欺の被害を受けていると感じたら、消費者庁「消費生活センター」や金融庁「金融サービス利用者相談室」などに相談をすること、絶対に1人で抱え込まないことを伝え、授業をまとめました。
生徒からは、
「投資やお金に関しておいしい話は在在しないということをいつも頭に入れて生活したいと思います。万が一のときは、すぐに親や消費者センターに相談しようと思います。」
「絶対に儲かる話はないと思いました。知らない名前の投資案件を聞いたら、まずそれを調べてみようと思います。」
「投資をすると儲かることもあるが必ずプラスになるとは限らないことがわかった。」
との感想を得られました。リスクとリターンの関係性を認識したことで、美味しい話は存在しないことを理解できたのではないかと考えられます。