「プラント・ベース・ミート」ではない代替肉の登場
しかし、この「プラント・ベース・ミート」もまた植物(豆類等)を必要とします。シンガポールは国土に占める農業用地の割合が約0.9%であるため普及が難しく、食糧自給率を上げる効果的な施策とは言えませんでした。そこで「プラント・ベース・ミート」の代替として、国内では注目を浴びているのが培養肉・培養魚です。
そうした背景もあり、シンガポール政府は世界で初めて培養鶏肉の販売許可を出し、話題を集めました
培養鶏肉の販売許可を世界で初めて認可したシンガポール
植物性たんぱく質を由来とする代替卵「JUST Egg(ジャストエッグ)」を展開しているアメリカ企業のイート・ジャストは、シンガポール食品庁から2020年12月に世界で初めて培養鶏肉の販売許可を取得しました。同国で培養鶏肉「GOOD Meat(グッドミート)」を販売し、現地のレストランで提供されています。同社は2030年までに培養鶏肉を畜産の鶏肉と同等価格にすることを目指しています。
シンガポールは培養肉に続いて、培養魚の開発も進んでいます。魚の培養脂肪を研究しているシンガポール企業「ImpactFat(インパクトファット)」は、世界初の培養魚脂肪を発表し、シンガポール食品庁の認可を受けました。同社は2022年3月に設立されたばかりですが、同年のアジア最大級の環境技術公募「2022年ザ・リバビリティ・チャレンジ」、「Asia Pacific Agri-Food Innovation Summit」を受賞し、目覚ましい成果をあげています。
培養魚はまだ商品化されておりませんが「ImpactFat(インパクトファット)」はシンガポールのナショナルギャラリーで試食会を開き、参加者からその風味について、高い評価を獲得しています。
魚の脂肪は不飽和脂肪酸を多く含み、心疾患リスクを軽減します。培養肉よりさらに、多くの人が選択できる食品になることが期待されます。
まとめ
培養肉・培養魚は実際に、「プラント・ベース・ミート」のように製造の過程で生き物が全く関係していないわけではありません。動物・魚の細胞を摂取し培養を行っているため、ヴィーガンやベジタリアンの人は手に取れない可能性があります。ですがそれでも、環境負荷が低く、動物の搾取も大幅に軽減できます。
魅力的な風味はそのままに、テクノロジーの力であらゆる面で考慮された培養肉・培養魚は、今後のわたしたちの消費や食事の選択肢を増やしてくれるでしょう。
※ 外務省「シンガポール基礎データ」
PR Times https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000137.000062184.html
(文:福永奈津美)