※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
食用油は、サラダ油一択から“様々なヘルシーオイルを選ぶ”時代に。
はじめに、私たちの食卓で使われる食用油の移り変わりを見ていきましょう。家庭用食用油の最大手である日清オイリオグループでは、ちょうど100年前の1924年に「日清サラダ油」という名前でサラダ油を販売しはじめました。当時の日本において食用油は揚げ物等の用途として使われていましたが、西洋のようにサラダ料理=生で使用できる精製度合を高めた良質な製品として名づけられたそう。
その後、「油っこくない」のフレーズで話題になった「日清キャノーラ油」やイタリア料理などに使うオリーブオイルが台頭。ココナッツオイルやアマニ油、MCTオイルなどの健康オイルブームも起こり、今では様々なヘルシーオイルが選択できる時代に移り変わっています。
令和になった今、具体的に食用油を選ぶ際に最も重視したいポイントとは一体何なのでしょうか?スーパーの食用油売り場に行くと、体に脂肪がつきにくい、すっきり油っこくない、揚げ物の吸油量を抑制できるなど、消費者の健康面などに配慮したコンセプトの商品が並んでいますが、もっと根源的な問題として注目されているのが、私たちの老化の引き金となる「酸化」への対策なのです。油の酸化はおいしさにおいても大きな影響をもたらすことがわかっており、食品企業における研究が進んでいます。それではまず、油の酸化が私たちを脅かす問題点について整理してみたいと思います。
油が酸化すると、健康面とおいしさにおいて悪影響がある
酸化した油(脂質)は過酸化脂質と呼ばれ、体に蓄積すると癌や動脈硬化症、アルツハイマー型認知症などの疾病につながることがわかっています。とはいえ私たちは日々の食事の中でやむを得ずに過酸化脂質を摂取しています。従来はこれらの過酸化脂質は過剰に摂取しない限り体内に吸収されないと言われてきたものの、最近の研究(※)において、過酸化脂質の摂取刺激が体の中で脂質の酸化を引き起こすことが報告されています。
また、酸化によるおいしさ劣化については一般的に言われてきたこと。油の酸化は、「光、高温、空気」などにより促進され、調理時に不快なにおいがしたり、色が濃くなるなどの変化が指摘されていましたが、これらの変化が食味分析や成分測定などの「株式会社味香り戦略研究所」の実証実験によっても明らかになっています。
・開封後90~120日相当の脂は、苦味、塩味、渋みが減少し、味に特徴がないのっぺり重くなる。
・においの変化は官能評価および成分測定によって実証。酸化した油は“より酸っぱいにおい”がする。
・油が酸化すると、目立った色の変化がある。
・酸化した油で素揚げしたかぼちゃの方がビタミンE(抗酸化力の指標)の含有率が減少した。
以上のことからも、食用油における酸化対策の重要性を実感することができるでしょう。私たちにとってうれしいのは、今年に入り酸化対策をコンセプトにした食用油が新たに商品化されて購入できるようになっているということ。
それでは次に、その商品の特長と技術についてご紹介をしていきましょう。