近年は電子デバイスやITテクノロジーを活用した学習「エドテック」が注目を浴びています。たとえば、小学校でタブレットを配布し、事前にタブレットのコンテンツを活用し個人学習をしたうえで対面の授業では、ディスカッションや分からない問題の解説を行う「反転授業」など、これまでの概念を大きく覆す学習方法が見受けられます。「エドテック」が変えていく未来の教育スタイルについて、詳しく解説します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
バーチャル世界の利点は「思いっきり失敗できる」こと。メタバース空間が、子どもの教育に適している理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本の教育の問題点とは?

昨今は日本経済の低迷や低成長により、日本の教育の問題点が数多く指摘されはじめています。大学入試を頂点とした点数主義がはびこり、子どもたちは点数を獲得するために興味のないことでも文字通り勉学を強いられています。

 

一方で、日本の基礎学力の高さはOECD(経済協力開発機構)が実施するPISA(学習到達度評価)で証明されていて、特に数学的リテラシーは世界でトップの位置です。平均を取ると日本には間違いなく世界トップクラスの教育があると言えますが、その教育がイノベーションを創出できる人材の育成にはつながっていないと言われています。

大人が本を読まない国ニッポン

社会人の平均的な読書量が少ないこともわかっています。文化庁の調査によると、全く本を読まない人が 47.3%と半数近くにのぼり、月に1,2冊の 37.2%を足すと、実に85%弱が毎月3冊以上を読む程度の読書習慣すらないのです(*1)。

 

いくら子どもの頃に学力が高かったとしても、社会人になって知識をアップデートすることを忘れてしまっては、社会で活躍できる人材とはなり得ません。子どもの頃に育むべきは、テストの点数で測定できる学力だけではなく、物事に興味関心を持てる「知的好奇心」であるべきでしょう。

アメリカで年々増加するホームスクーリング

子どもたちは多様な感性をもっていて、一人ひとりの興味関心や周囲への順応にはバラツキがあります。教室で机を並べて行われる一斉授業に馴染めなかったり、友人環境に恵まれないと、不登校を選択する子も少なくありません。

 
(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

ところが、日本では自宅で学ぶ「ホームスクーリング」が義務教育において正式に認められていないため、不登校の人にどのような学びの場を確保するのかは切実な問題です。不登校の正体にあるだけで落第したかのようなレッテルを貼られてしまいます。

 

一方アメリカでは、ホームスクーリングを選択する児童・生徒が年々増えていて、小学生から高校生までの11.1%となる約500万人にのぼるという調査結果(*2)もあります。州によって制度は異なりますが、家庭で実施する学習計画を教育委員会に提出すれば、長期でも短期でもフレキシブルにホームスクーリングを行うことができるようです。

 

また、ホームスクール生と呼ばれる、家庭を拠点として教育を受けている児童・生徒は通学する子どもよりもテストの平均点が高いことで知られています。時間にも余裕があることから課外活動に打ち込むことができ、興味関心の幅を広げやすい環境にあります。アメリカの名門大学は学力だけではなく、出願者の課外活動を評価することから、スタンフォード大学受験者の合格率はホームスクール生の方が高いとも言われています。