勤務先休業、電気・ガス・灯油の値上げ、さらなる追い打ち…「もう生きていけない」
感染拡大防止の観点からホテルの営業が休止となり、仕事が無くなる日も出てきました。そんな日は、家に居るしかないのですが、家に居るとその分、照明や暖房費にお金がかかってしまいます。収入は減るうえ、光熱費は嵩み、Aさんは買い物に出る気持ちにもなれません。
さらに息子たちの会社も影響を受けていて厳しいのか、仕送りの間隔も開いてきました。そして昨年(2022年)は、原油高や円安により最終的に2万822品目、値上げ率平均14%という記録的な値上げが家計を襲います。また、食料品だけでなく、電気・ガス・灯油の大幅値上げにも苦しめられます。
Aさんは、結婚当初から家計簿をかかさず付けていました。いつもはしないことですが、思わず過去3年分の家計簿を引っ張り出し、支出の金額の変化をチェックしてみました。いまのところ食料品等はなんとか工夫と我慢で抑えることもできますが、光熱費は簡単にいかず、昨年と比べて3割~4割も支出が増えていることに気が付き、値上げの恐ろしさに愕然となりました。
そして、光熱費の高騰に苦しんでいるところに、今年(2023年)の冬には10年に1度といわれる大寒波がやってきます。低い気温の日が続き、水道管が凍る家も続出しましたが、Aさんが困ったのは大雪です。Aさんの住む地方は雪も多いため、除雪が必要ですが、屋根の雪下ろしも必要な場合があります。
まだまだ雪かきは自信がありますが、屋根の雪下ろしはさすがにできないため、業者に依頼をします。危険な作業のため、2人で来て数時間かけて作業をするので、1回につき、20,000~30,000円程度かかります(地域や家の大きさ、雪の量によって変わります)が、これが何度か続いてしまうといまのAさんにとってはさすがに死活問題です。
地方に永住を希望する人も増えましたが、もし雪のある地方へ移住することを検討している場合は、こういった費用も必要なことを覚悟しておいてください。
インフレに備えられていない高齢者たち
さて、公的年金はインフレ率の分だけ上昇するわけでもありませんし、銀行預金の金利もビクともしないほど超低金利です。投資のリスクを取りにくい高齢者にとって、これはかなり不利になります。インフレはモノの価値が上がってお金の価値を下げてしまうので、インフレが続くほど預貯金があってもその価値をどんどん下げていってしまいます。高齢者の方でタンス預金をする方も多いですが、インフレ時期に価値を下げるだけでなく、盗難のリスクも大きくなるので注意が必要です。
現役時代から投資に慣れておくことや、生涯の働き方計画(ジョブプラン)を立てておくことがインフレ対策となります。雪も落ち着いたころ、Aさんに話を伺いました。
「値上げは40年以上も前に何度か経験したけど、高度成長期でお店の景気もよかったからそれほど気にならなかった。銀行にお金を預けっぱなしでも増えていった。その後は苦しい時期もあったけれど、新型コロナ辺りからは予想もできないくらい生活がどんどん変わっていってしまった。光熱費を気にしながら暖房やストーブを使っていたので、特に寒さが厳しい日は凍死を覚悟した日もあった。この年でこれだけ厳しいと、これから先、本当に生きていけないような気がする……」Aさんのような高齢者は今後も増えていくと思われます。
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所
代表