モノだけでなく光熱費の大高騰など、値上げラッシュが家計を圧迫しています。なかでも特に厳しい生活を強いられているのは、年金生活の高齢者です。本記事では、年金月6万円・70歳ホテル清掃員のAさんの事例を1級FPの川淵ゆかり氏が解説します。
「凍死も覚悟」年金月6万円・70歳ホテル清掃員「電気代破産」の危機…ギリギリ生活にトドメを刺したのは【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

東北地方に住む70歳のAさん…夫はすでに他界

Aさんは70歳の東北地方に住む女性です。22歳のときに3歳年上の小さな書店を営む男性(自営業)と結婚し、2児をもうけました。Aさんの夫は68歳のときに病気により亡くなってしまい、その後は1人で元店舗兼自宅(住宅ローンは完済済み)に住んでいます。2人の息子(46歳・44歳)はそれぞれ東京と大阪で就職し、年に1度か2度、孫を連れてやってくる程度です。同居を勧めてくれることもありましたが、この地方から出たことのないAさんは、住み慣れた家を離れるのも抵抗があり、嫁との同居も気が進みません。

 

書店は駅の近くにあり、若いころは経営も順調で、家族4人で楽しく暮らしていましたが、子どもが独立したころから本の売れ行きも悪くなってしまい、Aさんの夫が65歳になると同時に店を畳み、老後の生活に入って3年ほどで夫は他界してしまいます。

70歳を迎えたAさんがホテル清掃員として働き始めた理由

お店は畳みましたが改築もせずにそのままの状態で、Aさんの自宅はこのお店の奥まった所に続いています。店舗の入口部分が広いために冬場は寒く暖房費が馬鹿にならないのと、自宅が奥にあるため日が当たりづらく薄暗いため、1日中電気を付けているために電気代もかかります。Aさんの家に限らず、東北地方は全国的に見て日照時間が短いため、どうしても照明を付けている時間が長くなります。

 

店舗の改装などにお金もかかった過去もあり、預貯金もそれほどないのが現実で、自分自身の国民年金(月額約6.4万円)と息子達からのわずかな仕送りでしばらくは生活を続けていましたが、夫が亡くなり年金も自分の分だけとなってしまったことから、知り合いの紹介で、駅の近くのビジネスホテルに清掃員として働き始めました。運動にもなるし、外に出れば暖房費や電気代も節約になるだろう、と考えていたAさんですが、新型コロナウィルスの影響で家計は大きく変わってしまいます。