5年制の国立の高等教育機関である工業高等専門学校、通称「高専」。東大をはじめ名門校への編入や、就職活動における産業界からの高い評価など、優秀なイメージをもっている人も多いでしょう。また、教育費は5年間でわずか126万円と、私立はもちろん、公立高校と比べても安価です。しかし、高専出身であるFP Office株式会社の渥美功介FPは、純粋な学費だけではなく「トータルの費用」で検討すべきといいます。それはなぜか、詳しくみていきましょう。
学費は5年間で126万円!知られざる「高専」の世界…“学費以外にかかるお金”の落とし穴【高専出身FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「高専」とはそもそもどのような学校か

ライフプランニングをする際、教育費についての質問をよくうける。直近、高専に行かせたいので費用を知りたい、との声をいくつかいただいたのでテーマにしてみたいと思う。

 

そもそも高専とは「高等専門学校」の略称であり、実践的・創造的技術者を養成することを目的とした高等教育機関であり、全国に国公私立合わせて57校あり、全体で約6万人の学生が学んでいる。

 

大きな特徴は5つある。

 

①5年一貫教育(中学卒業後からの5年間で準学士の資格取得が可能)

②実験・実習を重視した専門教育

③ロボットコンテスト、プログラミングコンテスト、デザインコンペティション等の全国大会開催

④卒業生には産業界からの高い評価

⑤卒業後、更に高度な技術教育を受けるための専攻科(2年間)を設置

(卒業後は、専攻科や大学への3年時編入学、もしくは就職となる)

「高専」の学費は年間およそ23万円

では、実際の学費についてはどうか。今回は、高専のなかで9割を占める国立高専での費用について考えてみたい。

 

学費は文部科学省の省令で定められており、相場は5年間で約126万円である(入学検定料を除く、年額234,600円+入学料84,600円)。

 

文部科学省が行った「子供の学習費調査」によると、公立高校に通う高校生1人あたりにかかる教育費は年間約46万円なのに対し私立高校に通う高校生は年間約97万円であることを考えると、高専の年額23万円という額はかなり安いといえる。

 

卒業後に、大手の優良企業への就職斡旋があったり、大学への編入学が可能と考えると選択肢の幅も広く、工科系への進学、就職を検討したい方にはおススメの選択肢といえる。実は筆者も地方の国立高専の出身であり、その有益さを身をもって感じている。

 

高専での4、5年目の学費については、他大学との比較も必要といえるので、母校HPより以下抜粋した。

 

[図表]工科系大学と国立高専の教育費比較
[図表]工科系大学と国立高専の教育費比較

 

国立高専と工科系大学との年間の学費を比較すると、第4、第5学年は国立大学の1/2程度、私立大学の1/5程度の安い学費である。

 

「全寮制」をとっている高専もある

ただし、1、2年生は全寮制をとっている場合もあるので、学生寮での生活費がかかることに注意も必要だ。

 

寄宿料が月額700円、寮費が食事代を含めて月額約28,000円かかる。実家から離れて暮らすことになるため、支援金も含めると、学費に加えて月4~5万円程度かかることを考慮すべきである。

 

純粋な学費でみると安さはあるが、トータルの生活費という面も含め、検討をしたいものである。

 

 

渥美 功介

FP Office株式会社

ファイナンシャルプランナー