医療費が10万円以上かかったら…医療費控除、現役時代の感覚でいると
総務省『家計調査 家計収支編』(2021年平均)によると、「65歳以上・無職の夫婦だけの世帯」の1ヵ月あたりの「保険・医療費」は平均1万6,163円。そのうち「保健医療サービス」は9,104円。平均で年間5.6万円ほどの“医療費”がかかっています。
1月1日から12月31日までの1年間の医療費が10万円を超えると医療費控除が受けられることは良く知られています。たとえば1年間に医療費が30万円かかったとしたら「30万円-10万円=20万円」と、20万円の医療費控除を受けることができます。ただし高額療養費からの給付があったり、医療保険から入院給付金や手術給付金を受けたりした場合は医療費から差し引く必要があります。
また医療費控除は生計をひとつにしている家族の医療費も対象になります。健康保険証が別の場合も、一つの世帯として合算可能。申請を行うのは、世帯で一番所得が多い人となっています。
このようなことはよく知られたことで、「医療費年間10万円」を意識している人は多いでしょう。しかし「総所得金額等が200万円未満で、医療費が総所得金額等の5%を超えた場合は医療費控除の対象になる」ということは、意外と知られていません。
厚生年金受給者の平均年金額は月14万円。65歳以上の男性に限ると17万円ほどです。「年金の所得金額」は、年金収入から公的年金等控除額を引いて計算します(図表)。65歳で年金月17万円の元会社員であれば、「(17万円×12-110万円)×5%=4万7,000円」を超える医療費は控除の対象になるということになります。
このようにみていくと「収入が年金だけ」という人の場合は、10万円以下の医療費でも医療費控除を受けられる可能性が高いといえるでしょう。
――医療費、9万円かあ。控除は受けられないな
このように、現役時代の感覚で「医療費控除を受けられるのは、医療費10万円以上」と考えていると、知らずに損をしているケースも。確定申告の期限は、原則、翌年の3月15日までですが、還付金の申告ができる期間は該当の医療費を使った翌年の1月1日から5年間となっています。思い当たる人は、ぜひ、過去の医療費をさかのぼってみましょう。