防衛力強化、少子化への対策……山積する課題に対して、増税議論が白熱していますが、その先に見え隠れするのは、「消費税増税」という切り札。その際に海外と比較して「日本の消費税率の低さ」がクローズアップされますが、実際はどうなのでしょうか。
節操のない増税論者の主張…日本の「消費税率」は世界でも低い、は本当か? (※写真はイメージです/PIXTA)

EU諸国は「消費税15%以上」がルールだが…

世界と比べると、日本の消費税率は非常に低く感じられます。EU加盟国に関しては、EUのルールとして消費税は15%以上というものがあります。そのため加盟国の消費税率は非常に高くなっています。

 

――ヨーロッパは軒並み20%超え。日本だって倍にできるはず

 

数値上は確かにそうですが、これらの国の多くは、日本と同じように「軽減税率」を導入しています。たとえば「ハンガリー」は27%→18%、または15%、「ノルウェー」は25%→12%(食料品は15%)、「スウェーデン」25%→12%。上位国では「デンマーク」で軽減税率はないものの、多くの国で軽減税率を導入。「イギリス」では標準税率は20%であるものの、家庭用燃料・電力の供給、高齢者・低所得者を対象とした暖房設備等、チャイルドシート、避妊用品などは5%、食料品や上下水道、子ども用の衣料・靴などはゼロ税率となっています。

 

このように社会的に弱者と呼ばれる人たちが困らないよう、細かな税率区分にしたり、軽減税率を導入したり、というのが実際のところ。それにも関わらず「海外は~」と比較論で押し通そうとするわけですから、あまりに短絡的で国民の反感を買うのも当たり前といってもいいでしょう。

 

消費者物価指数が40数年ぶりの水準とか、物価高に賃金上昇が追いついていないと問題視されるなか、近い将来、消費税増税になるかといえば、多くの専門家は「否」とされています。現状では反対意見が強すぎて、万が一、増税すれば与党転覆になりかねないからだといいます。

 

物価上昇以上の賃上げを、と大企業を中心にいわれていますが、中小企業では望み薄。会社員の7割が中小企業勤務なので、国民の大多数の給与アップは実現しない……という未来が確実視されています。

 

そのような状況下、「消費税」が禁句のように扱われるのも考えもの。欧米諸国のように、生活必需品は税率を下げるなどの制度を導入してくれたら、賃金据え置きにも耐えられるのに……賃上げ一辺倒ではない方法も模索してほしいものです。