知り合いの保険外交員の勧めで、なにげなく個人年金保険に加入した会社員のAさん。「リスクをなるべく取りたくない」という人に人気の保険ですが、ここ数年の利回りは驚愕のものとなっています。今回は保険の見直しの際に利回りを確認したAさんの事例をみていきましょう。
定年直前の59歳・会社員が膝から崩れ落ちた「個人年金保険」驚愕の利回り (※写真はイメージです/PIXTA)

定年目前、知り合いの勧めで入った保険の内容を再確認

2022年は、毎月のように食料品をはじめとする生活必需品の値上げがニュースになりました。こうしたニュースを耳にしていた59歳の会社員Aさんは、1年後に定年退職を控え、老後の生活への漠然とした不安が明確なものになってきました。Aさんは退職後の仕事もまだ決まっていません。

 

ある休日、Aさん夫婦がなんとなくテレビを見ていると、「固定費の見直しが節約に効く!」という情報が目に飛び込んできました。「固定費」とは、住居費・光熱費・保険料といった、定期的かつ一定額で発生する費用のことです。Aさんはその番組から、固定費のなかでも生命保険等の保険料負担がなかなか大きいことを知りました。

 

そこで、2年前に知り合いの保険外交員の勧めで加入した個人年金保険の設計書を見返したところ、保険料が大きいことがわかったのです。当時のAさんは仕事が忙しく、個人年金の提案を受けた際も希望は「老後のために必要なお金だから、とにかくリスクのないものを」とだけ。Aさんは、その後受け取った設計書の内容も深く理解しないまま、契約してしまいました。

 

「たしか定年後もしばらくは保険料を払い続けないといけなかったような気がする……」不安に駆られたAさんは奥さんを連れて、保険証券を持って筆者の事務所にご相談に来られました。

「リスクを取りたくない」がアダに…加入した保険の驚愕の利回りとは?

個人年金保険には、いろいろな種類があります。まず、円で支払われた保険料を米ドルや豪ドルなどの外貨で運用する「外貨建て個人年金」。これは、為替の状況によって受け取る年金額が増減します。また、支払われた保険料を株式や債券を中心に運用する「変額年金保険」。これは、運用実績によって受け取る年金額が増減します。

 

Aさんは「リスクを取りたくない」という条件だったため、当時の保険外交員は円のまま運用する「円建て個人年金」を勧めたようです。

 

これは、たしかに為替や運用による変動リスクはありませんが、いまの日本は超低金利のため、ほとんど増えることはありません。また、Aさんの保険内容は、定年後10年以上も保険料を払い続ける必要があるもので、保険料総額720万円(毎月3万円ⅹ240ヵ月)に対し、一括受け取りの場合の金額は722万円、利回りを計算すると約0.08%。年金として受け取った場合の総額も約735万円、利回りは約0.1%でした。

 

内容を改めて把握しAさんは膝から崩れ落ちました。当時のAさんは、もらえる金額だけに意識が集中してしまい、保険料の支払総額はまったく考えていなかったとのこと。お子さんはすでに独立しており、預貯金もあり定年後は家のローンも残らないため、老後でも数万円の保険料なら支払っていけるだろう、と簡単に考えていたようです。奥さんに怒られていたAさんでしたが、契約した保険の内容がわからなくなっている人はかなり多くいらっしゃいます。また、支払う保険料の総額がいくらになるかを計算してみる人はほとんどいません。

 

いまのように超低金利が続いている日本では、元本割れとなる保険もあります。ですから、これまで考えてこなかった方も、Aさんのように定年前を機に保険の見直しや老後のお金について考えることは非常にいいことです。皆さんも1度保険証券を確認してみてはいかがでしょうか。