元通産省官僚・株式会社二十一世紀新社会システム研究所代表である、本田幸雄氏の著書『劇症型地球温暖化の危機 太陽光エネルギー革命で日本を再生する』より一部を抜粋・再編集し、日本の労働環境の実態について見ていきます。
非正規雇用者だけでなく「名ばかり正社員」まで…日本人の“低賃金化”がとまらないワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

非正規労働者層の拡大

アベノミクスで有り余る資金が低金利で借り換えできて、従業員は景気に合わせて自由に伸縮自在にできることになりました(本来、従業員にそれに見合った賃金を出せない企業はそもそも存続する資格がないのです。企業を解体してそれができる産業、企業に人材を供給しなければ、経済は回りません)。

 

これでは新しいことに手を出してリスクを冒す必要はありません。

 

アベノミクスで金は存分に供給してくれる。人間は余ったら非正規を切ればいい。これで少なくとも現状は維持できるのだから、経営者としては、これほど楽なことはありません。

 

余った金はいつ起きるかわからない将来のために積んでおこう。社内留保だけ積みあがる。これがアベノミクス時代の企業経営の実態です。

 

平成年間の前半は国がたっぷりと公共事業費を出してくれました。これで当社は助かりました。平成年間の後半はアベノミクスで金を存分に供給してもらい、非正規で不況を乗り切りました。社内留保もたっぷりとため込みました。

 

このような安易な官僚と企業の癒着がバルブ崩壊後の企業運営から真剣さをなくしてしまったのです。これでは日本産業が衰退するはずです。

 

アベノミクスを9年〈第2期安倍内閣〉も維持したのです。企業はすっかり弱くなりました。

 

非正規労働者は、1999年に25%、2003年に30%を超え2012年には過去最高の35.2%を記録し3人に1人超を占めるようになりました。また、若年層の非正規雇用率については、学生を除いた15~24歳で31.2%、25~34歳で26.5%であり、全体と比較すると低いものの上昇傾向にあります(これでは少子高齢化が進むはずです)。

 

今の政治は見て見ぬふりをしていますが、これも次世代に対するツケ、大変大きなツケです。

 

歴史に逆行する世襲の身分制度というツケですから、これほど大きなツケはありません(人類の歴史は身分制度の撤廃の歴史でもありました。それを歴史に逆行して、実質、平成年間に身分制度を新たに導入したのですから、これほどの悪政はありません)。