給与から天引きされる年金保険料。納めた以上に年金を手にしたいとは、誰もが思うところ。しかし年金を手にする前に天命を全うする人もいて、誰もが年金を手にできるわけではありません。納めた保険料は無駄になるのでしょうか。みていきましょう。
会社員、年金をもらう「65歳より前」に無念の死亡…納めた「年金保険料」はどうなる? (※写真はイメージです/PIXTA)

年金保険料を払っていれば、死んでも家族を支えることができる

——給与からたくさん天引きされて、年金が1円ももらえないなんて、悲劇!

 

そう嘆く必要はありません。要件を満たしていれば、年金を手にする前に亡くなったとしても、遺族を支えることが可能です。

 

遺族基礎年金

まず遺族が手にできるのが「遺族基礎年金」。亡くなった人が①~④のいずれかの条件を満たしている場合、死亡した人に生計を維持されていた遺族、具体的には「子のある配偶者」「18歳になった年度の3月31日までの子」が、遺族基礎年金を受け取ることができます。

 

①国民年金の被保険者である

②60歳以上65歳未満で日本国内に住所がある

③老齢基礎年金の受給権者である

④老齢基礎年金の受給資格を満たしたている

 

年金額(2022年4月~)は、子のある配偶者であれば「77万7,800円+子の加算額」、子どもであれば 「77万7,800円+2人目以降の子の加算額」。子の加算額は1人目および2人目の子で各22万3,800円、3人目以降は各7万4600円になります。

 

遺族厚生年金

亡くなった人が、次の①~⑤のいずれかの条件を満たしている場合に受け取れるのは「遺族厚生年金」。

 

①厚生年金保険の被保険者である

②死亡した原因の病気やけがが、厚生年金の被保険者期間に初診日があり、その初診日から5年以内に死亡したとき

③1級・2級の障害厚生年金、または障害共済年金を受けとっている

④老齢厚生年金の受給権者である

⑤老齢厚生年金の受給資格を満たしている

 

受け取れるのは、死亡した人に生計を維持され、優先順位の高い遺族。受け取れる年金額は死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です

 

優先順位1位:妻

優先順位2位:子

*18歳になった年の3月31日までの子、もしくは20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態の子

優先順位3位:55歳以上(死亡当時)の夫

優先順位4位:55歳以上(死亡当時)の父母

優先順位5位:孫

*18歳になった年の3月31日までの孫、もしくは20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態の孫

優先順位6位:55歳以上(死亡当時)の祖父母

 

寡婦年金、死亡一時金

死亡した夫と妻が①~③の条件を満たし、妻が60~65歳の場合に受け取れるのが「寡婦年金」。夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3を受け取ることができます。

 

①夫が、死亡日の前日に国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間、および国民年金の保険料免除期間が10年以上あること

②夫と10年以上継続して婚姻関係(含む、事実上の婚姻関係)にあること

③妻が夫に生計を維持されていること

 

また死亡した人が「死亡前日に、第1号被保険者として保険料を納めた月数が36ヵ月以上ある」「過去に老齢基礎年金・障害基礎年金を受給されていない」という条件を満たしていれば、保険料を納めた月数に応じて12万~32万円の死亡一時金が支給されます。支給されるのは、「配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹」と優先順位の高い人になります。

 

 

それぞれ留意事項があるので、日本年金機構のホームページなどでしっかりと情報をチェックしましょう。

 

このように年金保険料を納めておけば、万が一のことがあっても、遺族を支えることができます。「納めた保険料はどうなるんだ!?」という疑問もすっきり解決、というわけです。ただそれで家族が暮らしていけるかといえば人それぞれ。考えたくもないことですが、大切な家族、万が一のことがあっても路頭に迷わぬよう、常に準備万端でいることが肝心です。