書き上げるために必要なのは「ネットでの情報収集スキル」
ライターというと、文才が必要だとか、文章力が必要だと思われるかもしれません。
確かに、ある程度の文章力は必要ですが、よほどひどい文章でない限り、文章力はそれほど重要ではないと思えます。ライターは文豪ではありません。
ライターにはむしろ、「調査力」が必要です。
といっても、足で情報を集めたり、どこかの団体に潜入したり、有料の新聞データベースを駆使したり、国会図書館に入り浸ったり、といったことではありません。
まずは、ネット上から必要な情報を集めるスキルが求められるのです。
ネット上から情報を集めることなど誰でもできることなので、差別化が難しいのでは? と思われる方も多いでしょう。
ところが、このスキルは人によってかなり差があります。
「検索のセンス」は人によって差がある
たとえば私が会社員だったときの話になりますが、パソコンがトラブルを起こしたり、クライアントの要請で何か課題を解決しなければならなくなったりしたとき、どの社員もネット上から情報を集められるはずなのに、人によって情報収集のスキルに大きな差がありました。
つまり、ネット上の情報にアクセスできる環境が同じでも、検索キーワードの選び方や組み合わせ方で差が出るのです。いわば「検索のセンス」の差です。検索のセンスとは、あることを調べるのに、どのような複合キーワード・共起語(あるキーワードに対して関連性が高く共に使われる頻度が高い言葉)を使うか、あるいはまったく別のキーワードで搦め手から攻めるか、といったことを、瞬時に判断して、どんどんトライアンドエラーを繰り返せる集中力のことです。
検索センスを磨くには?
このような検索センスを磨くには、どうしたらいいのでしょうか。
ひとつはたくさん検索することで勘を養うことです。そしてもうひとつは、普段から多くの情報に触れることです。
たくさんの情報をインプットして全てを理解し記憶することは、特殊な才能の持ち主でなければ困難です。現代は必要な情報はいつでもネットから得られるので、無理に自分が記憶することはありません。南方熊楠のような博覧強記になるためには特殊な才能が必要です。誰もができることではありません。
ただ、「(ある情報を)一度は頭に入れたことがある」という知的体験(本や雑誌、新聞を読んだり、映画を見たり、実際に訪れたり体験してみたりすること)は必要です。そうすれば、「正確には思い出せないけど、確かXXに関することだったなぁ」とか、「言葉は忘れたけど、XXとXXというキーワードで見つかるはずだ」、あるいは「おそらくXXを調べれば近づけるはずだ」などと、瞬時に検索の手がかりを思い浮かべることができるようになります。しかも、その手がかりが何通りも浮かべば、いずれかが目的の情報に導いてくれます。このように、調べるスキルというのは、たくさんの知的体験を通して磨くことができるのです。
こうして調査力が高まってくると、同時に情報の「取捨選択能力」も高まります。検索でヒットした膨大なサイトのなかから、役に立つ情報を選別するスキルです。
このスキルを獲得できれば、たとえば検索でヒットしたサイトのタイトルと概要説明だけを見て、不要なサイトをどんどんスキップしていくことができます。あるいは、Webサイトを開いてリード文を読むだけで、必要なサイトを選んでいけます。
実際に記事を作成する上で必要なのは、記事のテーマに関係ありそうな情報を多面的なアプローチで集めるスキルと、集めた情報のなかから必要な情報を選別するスキルです。すなわち、一旦視野を広げて関連情報を俯瞰し、全体を把握したあとで必要な情報を絞り込むスキルです。たとえば私の場合、2000字程度の記事をひとつ書くために、20〜30ほどのWebサイトを拾い上げて、4000〜1万字ほどの情報を抽出して編集してから、2000字の記事に落とし込みます。
しげぞう(地蔵 重樹)
1962年生まれ。フリーランスライター。ビジネス書のブックライティングを中心に、広報誌や業界誌などの印刷媒体から、企業のオウンドメディアやWebマガジンなどのWeb媒体で執筆活動を行っている。会社員時代、勤務先の経営不振による減俸を補うために副業でライティングをはじめ、リストラが行われた際にフリーランスライターとして独立。
著書に『1日1時間から稼ぐ 副業ライターのはじめ方(第3版)』(自由国民社)、『月10万円も夢じゃない! Webを活用して副業ライターで稼ぐ』(秀和システム)、『駅猫Diary』(洋泉社)がある。